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「やっぱりヤクルト高津監督のアイデアはひと味違う…」沖縄でビックリした高卒3年目・内山壮真、異例の起用法「難しい“捕手の育て方”」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2023/02/22 11:02
ヤクルトの高卒3年目・内山壮真(20歳)、昨季は捕手として57試合でマスクをかぶった
「内山から詳しくは聞いてないですが、0―2と追い込まれてから、阿部投手のスプリットを2球、しっかりと見極めてるんです。そのあとに来たストレートをホームランにしましたからね。キャッチャーをやっていることもあると思いますが、内山はしっかり相手の配球を読んでいた気がします。それでも、あそこで打てる20歳はすごいと思いますけどね」
昨季は捕手として57試合でマスクをかぶり、当時42歳の大ベテラン、石川雅規とバッテリーを組む機会も多かった。
「キャッチャーとレフトの二刀流」
こうして2年目に成長を見せ、要所要所で印象的な活躍をしてきた内山だけに、スワローズの首脳陣としても「将来の正捕手」としての期待が膨らんでいるのは間違いない。しかし、スワローズの「扇の要」には侍ジャパンにも選出されている中村悠平がいる。
キャッチャーというポジションはひとつしかない。実戦の機会は限られる。二軍でマスクをかぶるという選択肢もあるだろうが、今季、高津監督が出したアイデアは、
「キャッチャーとレフトの二刀流」
というクリエイティブなものだった。その意図を高津監督はこう話す。
「あくまで、将来の正捕手を見据えた起用法です。一軍の試合に出て、一流の投手の球を見て、打つ。それが成長へのいちばんの近道だと思います」
実は、以前から高津監督には、内山の二刀流のアイデアはあった。一昨年のオフにインタビューした時には、
「高校時代に守っていたショートと、キャッチャーの二刀流が出来ないものかなあと思って。検討する価値はあると思うんですよね」という話も聞いていた。
しかし、2022年のシーズン、キャンプでギリギリ一軍スタートだった長岡秀樹が台頭し、ショートのレギュラーに定着、ゴールデングラブ賞まで獲得した。これで捕手と内野の二刀流のアイデアは消滅したが、2023年の開幕を見据えた時、ひとつだけ固定されていないポジションがあった。
レフトである。
高津監督が語った「出場機会の重要性」
昨季は青木宣親、山崎晃大朗、キブレハン、濱田太貴などが守ったが、いずれもレギュラーに定着したとはいえず、ヤクルトにとってレフトの「プロダクション」、生産性をアップさせることは重要な課題となっている。この定位置争いに内山が加わることで、活性化を促す意味もあるだろう。