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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ヘッドスライディングで骨折→翌年も再び…なぜ? 元DeNA倉本寿彦32歳が明かす“戦力外への焦り”「その一本で人生が変わるんですよ」
posted2023/02/21 11:03
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Kyozo Hibino
主に二塁手として起用されるようになった2018年以降、倉本寿彦は苦難のときを過ごした。好転の兆しが見られた20年のシーズンを経て、もう一花咲かせようと意気込んでいた21年。その序盤に、倉本は負傷離脱してしまう。
21年序盤で…「あのとき、もやもやしてたな」
5月9日の阪神戦で一塁へのヘッドスライディングを試みた際、左手をベースで強打した。ベンチ裏で、脱臼していた薬指をねじ込んで元に戻し、出場継続を訴えた。だが聞き入れられることはなく、翌10日、医師の診断を待たずして登録抹消となった。
倉本は感情をあまり表に出さないタイプだが、際どいタイミングと見ればヘッドスライディングを仕掛けることが何度かあった。負傷につながったプレーについては「いつもより飛び込むタイミングがひとつ遅れた」と振り返る。
問題は、その原因だ。
「(ケガを)やってから思いました。あのとき、もやもやしてたなって。まあ、そうなるよなって。だから、お灸を据えられたような気がするんですよ。『そんなもやもやした気持ちでプレーしてたらダメ。もう一回、人としてちゃんと考えなさい』って。そういう意味では、ぼくに必要なケガだったんじゃないですか」
チームにとって自分は何なのか――その答えを明確に感じ取ることが年々難しくなっていた。18年に、同じ遊撃手の大和を獲得。そして19年のドラフトで高校生の内野手、森敬斗を1位指名。チーム編成の路線が、自分がいないところに敷かれつつあることを感じずにはいられなかった。
仕方のないことだ。プロは弱肉強食の世界。結果で評価を覆すしかない。
もちろん倉本もそれを頭では分かっていたが、心に靄はかかり続けた。その靄が、一塁に飛び込むタイミングを一歩、狂わせたのかもしれなかった。