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「モリヤスの采配は恐ろしい…」再び“歴史的番狂わせ”現地のスペイン人記者の本音…日本をどう見た?「ドウアン、ミトマは完璧な交代カードだ」
text by
アントニオ・ルイス+井川洋一Antonio Ruiz + Yoichi Igawa
photograph byAP/AFLO
posted2022/12/02 19:30
田中碧の2点目をアシストした三笘の折り返し。ゴールラインを割っていたかどうか、VARチェックが行われゴールが認定された
いつも通りの4-3-3でスタートしたスペインは、いつも通りにリズムよくパスを回し、11分にアスピリクエタのクロスからモラタが強烈なヘディングで先制点を奪った。序盤に先行すると、まだまだ時間はたっぷりと残されているにもかかわらず、スペインは少しずつギアを落としていった。まるで自分たちのミッションが完遂されたかのように。
攻撃時には球を持っていない選手の動きが減っていき、相手ボールの際にはプレスの強度が弱まっていった。ハーフタイムに三笘薫と堂安律を投入した日本に対し、スペインはアスピリクエタをダニエル・カルバハルと交代させた。
後半の堂安と田中碧のゴールはどちらも左サイドを崩されて喫したもので、直接的には19歳の左ラテラル(左サイドバック)、アレハンドロ・バルデがもっとも責任を問われるべきだろう。ただし、チェルシーでキャプテンを務めるアスピリクエタを下げたことで、後半のピッチ上にはスペインのリーダーがひとり減っていた。逆転されて動揺を隠せなかった若手の多いチームを、いま一度奮い立たせることができなかった理由のひとつと言えよう。
「森保監督の采配は恐ろしいほど…」
何よりも気概を重んじるエンリケ監督は、不甲斐ないチームの出来を改善しようと、交代のカードを次々に切った。しかし、昨年の東京五輪の準決勝で日本の息の根を止めたマルコ・アセンシオも、単独突破を得意とするアンス・ファティも、極限までに集中し、組織的な守備網を敷いた日本を崩せなかった。そして史上初めて、日本に黒星を喫してしまったのだった。
日本はまさしく、ドイツ戦と同じような戦いぶりでスペインを下した。W杯優勝国に先制されてもまったく諦めず、ハーフタイムに攻撃的なカードを切り、その選手たちが躍動した。相手の強みを消して、自分たちの時間が来ることを信じ、それが訪れた際には嵩にかかって攻勢をかけ、見事に形勢とスコアをひっくり返している。戦術的にも、戦略的にも、実に優れたチームだ。