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「2試合で2点獲った選手を前半で代えるのかぁ…」あの熱狂から20年、稲本潤一42歳が語った日韓W杯の“忘れがたい悔しさ” 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2022/06/02 11:04

「2試合で2点獲った選手を前半で代えるのかぁ…」あの熱狂から20年、稲本潤一42歳が語った日韓W杯の“忘れがたい悔しさ”<Number Web> photograph by JMPA

2002年の日韓W杯ベルギー戦、左足を振り抜いてゴールを決める稲本潤一。日本中を熱狂させた20年前の記憶を紐解いてもらった

 このファーストプレーについて問うと、稲本は「そうなんですか。まあ、間違いなく乗っていたんでしょうね」と他人事のように笑った。

「ゴールについてはチャンスがあれば、という感じですね。僕自身、攻撃ありきではなく、まずはしっかり守備から入るほうが調子は上がっていくということを知っていたので。ディフェンスから入るという気持ちが強かったと思います。だからこそ、どうしてあんなに前にいたのかと不思議なんですよね。ロシア戦のゴールに関しては」

 スコアの動かなかった前半を経て、51分に稲本がふたたびゴールを決めた。得点が決まった瞬間、ロシアのディフェンダーがオフサイドではないかと手を挙げている。それほど前線に立っていたということだろう。

 楢崎正剛が蹴ったGKを鈴木隆行が競り、倒される。そこで得たFKからの横パスを戸田が左の中田浩二へ展開。中田はペナルティエリア中央の柳沢へ低いパスを送る。柳沢がダイレクトで折り返したボールを稲本は左足でトラップし、右足で打つ。この時点でペナルティエリアにはロシアの選手が7人、日本の選手も4人いたが、稲本はフリーでシュートしている。ボールはゴール上部へと突き刺さった。

「ツータッチでシュートできるところにしっかりとボールを止められたので、あのゴールになった。上を狙った記憶はないんです。ただ、僕から見て、右が空いていたので、そっちへ蹴ろうとしか考えていなかった。あそこを狙ったということではないですね」

 85分に交代した稲本は、ベンチで日本のワールドカップ初勝利の瞬間を見届ける。

「福さん(福西崇史)が交代で出たんですけど、誰が出てもレベルが下がるようなチームではなかったので。安心して見ていました」

 翌日に行われたチュニジア対ベルギーが1-1の引き分けだったことで、日本のグループリーグ突破が濃厚になった。

 1位通過か、2位通過か。順位を決めるうえで重要な6月14日のチュニジア戦でも、稲本は先発出場している。しかし、スコアが動かなかった前半終了後、ハーフタイムで交代を命じられた。

「確かにチュニジア戦ではコンディションも動きもあまりよくなかった、という記憶があります。市川(大祐)と代わって、右にいたミョウくん(明神智和)と戸田くんがボランチでコンビを組みましたよね」

【次ページ】 「選手としては考えるんですよ、代えられた理由を」

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