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格下相手に「もっと得点できた」から脱出? 日本代表“全ポジションで熾烈なメンバー争い”が加速〈序列はどうなる?〉
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/05/29 11:40
ミャンマー相手に10-0の快勝。圧倒的な安定感を見せたのは、遠藤航(左)と守田英正(右)によるダブルボランチだろう
これで2次予選は6連勝となり、2位のタジキスタンに勝点8差をつけた。日本が残り2試合に連敗しても順位は変わらず、首位での最終予選進出が決まった。
FIFAランキングが3ケタのミャンマーに大勝しても、喜びが爆発することはない。試合後の森保監督は2次予選突破について、「我々と対戦国との差が、結果的にあったのかなと思う」と分析している。
しかし、2次予選の前半戦で見られた〈格下相手に力の差を見せつけられない〉というジレンマには陥らなかった。52歳の指揮官は「戦う相手は目の前のミャンマーだが、自分たちはより高い基準を持って成長するんだということを、選手たちは今日も意識して戦ってくれた」と評価した。
率直に言って対戦相手は物足りない。それでも、「過去最高のワールドカップベスト8入り」という目標を意識し、与えられた環境のなかでレベルアップを図っていった姿勢は、最終予選につながるだろう。
3月開催予定の試合が急きょこの日程に組み込まれたため、ミャンマー戦は海外組のみでチームが編成された。結果的にそれも、最終予選への準備となっただろう。
最終予選の詳細はまだ決まっていないが、今回のように数カ月ぶりに帰国して数日後に試合をする、という日程はあるはずだ。連戦の2試合目ではなく1試合目が最終予選になると、ホームゲームでもメリットを享受しにくいところがある。そう考えると、「格下に勝って当たり前の試合」という重圧に縛られることなく、自分たちのクオリティを発揮して勝点3をつかんだミャンマー戦は、最終予選へのシミュレーションになったと言える。
コマ不足を感じるポジションはない
このチームが立ち上げられた当初、メディアの注目を集めたのは中島翔哉であり堂安律だった。南野拓実との2列目のトリオは「新三銃士」などと言われたものだ。
ミャンマー戦のスタメンに、中島と堂安の名前はなかった。かつては東京五輪のオーバーエイジ候補とも言われたボランチの柴崎岳もいない。吉田と不動のセンターバックコンビを組む冨安健洋は、膝の違和感を訴えてメンバー外だった。出場した試合は8試合連続無失点中のGK権田修一も、6月シリーズからの合流となる。
それでも、コマ不足を感じるポジションはないのだ。
1トップの大迫勇也を頂点に、2列目右サイドの伊東純也、トップ下の鎌田大地、2列目左サイドの南野のユニットは、3月の2試合を経て相互理解をさらに深めている印象だ。伊東は得意のドリブル突破へつなげるために、サイドに開いて幅を取る。鎌田は相手の守備ブロックの間で、巧みにボールを引き出す。南野は伊東より内側にポジションを取る。左サイドバックの長友佑都に攻め上がるスペースを提供しつつ、大迫や鎌田との距離感を考えている。
ミャンマー戦では大迫が5ゴールを叩き出し、南野も2得点3アシストを記録した。鎌田は1得点1アシストだ。伊東は無得点に終わったものの、得点の流れに関わっている。所属クラブで充実のシーズンを過ごした鎌田と伊東によって、攻撃のユニットはパワーアップした。