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アグエロ、テベス、サバレタ… プレミアファンの心に残る偉大なアルゼンチン人選手伝説とは
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/04/21 17:00
プレミアで最も成功を収めたアルゼンチン人と言えばアグエロだろう
2006-07シーズンにはウェストハムのプレミアリーグ残留に貢献。07-08シーズンから2年間在籍したマンチェスター・ユナイテッドではウェイン・ルーニー、朴智星とともにフルタイム・フルスロットルで活躍し、チャンピオンズリーグ制覇と2度のリーグ優勝に尽力している。さらにシティに移籍してアグエロと2トップを組んでネットを揺らしたり、サイドからの崩しを見せたり……。まさしくハードワーカーだった。
彼らアルゼンチン勢の共通点はひたむきさであり、折れない心だ。才能の違いこそあれ、フットボールに対して正直なのである。よくよく考えてみると、プレミアリーグが産声をあげる15年ほど前、トッテナムで活躍したオズワルド・アルディレスもサポーターに熱く支持される アルゼンチン人選手のひとりだ。
170cm、60kg の痩身ながら、優美なテクニックと真摯な姿勢で中盤を支えていた。当時、英国とアルゼンチンはフォークランド諸島を巡って政治的緊張感がピークに達していたが、トッテナムのサポーターが心のこもったバナーを掲げアルディレスに対する愛情を示した事実がある。
アルディレスが明かしてくれたエピソード
「オジ―(アルディレスの愛称)がここにいてくれるのなら、フォークランドなんぞくれてやる!」
清水エスパルスの監督を務めていた当時のアルディレスに、このエピソードに関して質問したことがある。彼は穏やかな口調でこう言った
「いまでもハッキリ覚えている。一生の想い出だね」
アグエロとシティのサポーターも幸せなハッピーエンド を迎えようとしている。
テベスがユナイテッドの一員として当時のホーム、アップトン・パークに戻って来たとき、ウェストハム・サポーターから「アル・ヘン・ティナ! アル・ヘン・ティナ!」 の大合唱が起きた。テベスが両腕を交差してウェストハムのエンブレムを示すと、スタジアムのボルテージは最高潮に達した。
2017年、シティを愛する少年ファンは「お願いだから行かないで」と、 ウェストハムに移籍するサバレタの胸にすがって泣いた。
この先もアルゼンチン人選手とプレミアリーグは、素敵な物語を紡いでいくに違いない。