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パワプロの中の人に聞いてみよう。
あの選手の能力値はどう決めてる?
text by
ハル飯田Haru Iida
photograph byTamon Matsuzono
posted2020/07/08 10:00
選手も気になるという『パワプロ』の能力値。俊足で鳴らした元阪神の赤星憲広氏(写真)は、OBとして登場した自身の「肩の弱さ」に言及したとか。
査定システム、スコアラーが実在!
「細かい数式については明かせませんが、成績から能力値へ変換するシステムは存在します。共同通信デジタルさんにご提供頂いている成績データやセイバーメトリクスも考慮しながら、独自の基準で決定しています」
やはり噂の査定システムは実在した! しかし、全ての能力値がシステムによって決定されているかと言えばそうではない。
「単純な数値化では怪我やチーム事情で出場機会を減らした選手が不利になってしまいます。そこで開発チームでは、ファームを含むプロ野球全試合の映像がいつでもチェック可能な体制を作っており、その映像を元に各球団ごとに存在する担当者が数値化を進めています」
つまり全球団に“スコアラー”が配置されているのだ。能力値は「担当者制」と「システム」のハイブリッド体制で決められている訳だ。
新人はアマチュア時代の映像を見て。
さらに聞けば、各担当者ごとの基準のブレをなくすため、全体での査定会議を行うのはもちろんのこと、全体を統括するバランサー的な役目を果たす人もいるとのこと。実際に球場で試合を観戦することもあり、頭だけでなく足も使って査定されているそうだ。
なお、常に新しい人材が入ってくる開発環境で引継ぎとローテーションを実施しているため、前述の「好きな球団を贔屓する担当者」は「いない」という結論になった。
「シミュレーションゲームとしても違和感のない能力値になるよう、開発段階では何度も繰り返しペナントレース機能でテストを実施しています。特に資料の少ない新人選手については、球種を正確に調査するため、アマチュア時代の試合映像をコマ送りしてチェックすることもありますね」
実際の映像分析までして緻密に設定されているとは……。ゲームの発売後も常にチェックを欠かさず、適宜データがアップデートされる。パワプロの選手データの裏には我々の想像を超える工夫と努力がつまっていた。
ちなみに筆者なりの調査を基にした仮説が「投手の『ノビ』という能力値は『ストレート空振り奪取率』と比例している」というもの。開発の裏側に迫る強気の質問も自信たっぷりに投げ込んではみたのだが、森さんは「そこに目をつけましたか。なるほど~」と笑ってはぐらかされてしまった。これはさすがに“ボール”の判定だったようだ。