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最終走者となったMGCで変わった
岩出玲亜のマラソン人生。

posted2020/07/08 11:00

 
最終走者となったMGCで変わった岩出玲亜のマラソン人生。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

PROFILE

photograph by

Kiichi Matsumoto

 マラソンで東京オリンピック出場を狙うため、実業団を離れ、プロへと転向した岩出玲亜。臨んだ昨年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)では、序盤の5km付近から遅れはじめ、完走したランナーの最終9位でレースを終えた。だが、代表争いに絡めなくても走り続け、ラスト1kmからは沿道の観客とハイタッチをしながら走る彼女の姿はとても印象的だった。彼女はなぜ走り続けたのか。

 MGCは間違いなく私の陸上人生のターニングポイントになりました。

 元々は野口みずきさんに憧れて、私もマラソンランナーになりたい! と思って競技を始めました。

 勉強もあまり好きじゃなかったし、スポーツを仕事にできれば、より人生が豊かになるだろうなって思っていて、中学1年生の時には、すでに陸上で生きていこうと決めていました。

 私は、あれもできる、これもできると選択肢があると、陸上がうまくいかなかった時に、気持ちが揺らぐ可能性がある。だから、逃げ道を作らず、陸上だけで突き抜けていこうと思っていました。

 中学・高校では3000mなどを走っていましたが、あくまでも私の中では通過点。走るなら絶対マラソン! という思いは揺らいだことはありません。

 実業団は恵まれた環境でしたが、自分にとっては無駄だと感じる時間も多くて。これでオリンピックを逃したらきっと後悔すると思ってプロになったんです。

なぜ最後まで走り切れたのか。

 MGCで日本代表になれるのは2位の選手まで。残りの1枠は、その後に行なわれるレースで決まりますから、最終ランナーになった時点で、本来なら頭を切り替えて、次の試合のためにダメージを残さないようにリタイアするのが普通だし、実際、そうしようと思っていました。

 ではなぜ走ったかと言うと、応援があったから。普通のマラソン大会だと、私の後ろにはたくさんの市民ランナーの方がいるじゃないですか。だから、沿道からの応援は私だけでなく、みんなのためのものです。

 だけどMGCの時は私が最後で、私しか走っていない。つまり自分の行く先にいる人は、みんな私を応援しようと待ってくれているんだ、って気づいたんです。

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