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タンザニア初、女子陸上大会の開催。
立ち上げに関わった日本人女性の思い。

posted2020/02/13 15:00

 
タンザニア初、女子陸上大会の開催。立ち上げに関わった日本人女性の思い。<Number Web> photograph by JICA

遠く離れた町から参加するために、役場から交通費の寄付を受けた選手もいた。

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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JICA

伊藤美和

今回の冒険者
伊藤美和さんMiwa Ito

大学院卒業後、日本大使館勤務を経て2012年にJICA入構。開発途上国からの研修員受入業務やアフリカ地域担当を務め、'15年11月からタンザニア事務所へ赴任。LADIES FIRST立ち上げに関わり、'19年12月に帰国。現在はJICA本部にて勤務。

 2017年11月25日は、東アフリカ・タンザニアの女性にとって記念すべき一日となった。というのも同国で初めて、女性だけの陸上大会が開催されたからだ。

《LADIES FIRST(以下LF)》と名づけられたこの大会の誕生には、日本人女性、伊藤美和さんが深く関わっている。

 '15年11月、同国のJICA事務所に赴任した伊藤さんに1年後、転機となる出会いが訪れた。その人物はジュマ・イカンガーさん。'80年代、瀬古利彦さんと名勝負を繰り広げた伝説のマラソンランナーだ。

 JICAタンザニア事務所の広報大使となったイカンガーさんは、伊藤さんと仕事を通じて頻繁に会うようになり、その中からLFのアイデアが出てきた。

「スポーツは男性がやるもの」

 伊藤さんが、その経緯を語る。

「イカンガーさんは、タンザニアの現状にもどかしさを感じていました。近隣のエチオピア、ケニアは優秀な女性選手を輩出しているのに、この国からは出てこない。独立直後、アフリカの大会でこの国に初のメダルをもたらしたのは、女性だったのに……と。タンザニア女性は世界で戦える、そのことを思い出すためにも女性の大会を開こう。彼は、そう提案したのです」

 この提案に、伊藤さんは大きな可能性を感じた。というのも162カ国中130位という国連のジェンダー不平等指数が示すように、タンザニアの、とりわけ農村部では女性が弱い立場に置かれているからだ。

「宗教や文化、慣習の影響もあって、多くの女性は中学校を出たら家庭に入り、出産して家事に専念することを強いられます。スポーツは男性がやるもの、女性がやると出産できなくなるという偏見まである。スポーツを通じて女性がもっと自由になれたら、そんな思いで協力することにしたのです」

 タンザニア初の女性だけの陸上大会。イカンガーさんが熱心に訴えかけたこともあり、その意義は理解されていったが、実現には多くの壁が立ちはだかった。

【次ページ】 昼食は届かず、シューズも履かない。

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