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東京五輪のボランティアは12万人。
彼らをサポートする仕事、とは。 

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芦部聡

芦部聡Satoshi Ashibe

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posted2019/12/09 07:00

東京五輪のボランティアは12万人。彼らをサポートする仕事、とは。<Number Web> photograph by Satoshi Ashibe

山田周さん。

【ボランティア研修】
来夏の祭典の成功には多数のボランティアが不可欠だ。しかし、年齢や職業、国籍などの異なる人々が集まり、ボランティアとしてすぐに活動できるはずもない。本番に向けた研修はどのように進められているのだろう。

 オリンピックは世界最大規模の祭典だ。東京五輪で実施される競技種目数は33競技339種目、参加国・地域数が206、参加選手数となると1万1000人以上に及ぶ。これほどのメガイベントをスムーズに実施するには膨大な人数が必要となる。運営の実務を担う「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下組織委員会)」の職員数は'14年の約60人から開幕時には8000人規模に増員されるというが、これでもまだまだ足りない。観客の案内や競技運営のサポートなど、現場で汗をかくボランティアの力が必要不可欠である。

「組織委員会が管轄するField Cast(大会ボランティア)が8万人、東京都が募集したCity Cast(都市ボランティア)は3万人、その他地域で1万5000人、合計で12万人以上もの人々がボランティアとして東京2020に参加します。日本財団ボランティアサポートセンター(以下ボラサポ)は、その名のとおりボランティアをサポートする組織です」

 組織委員会と日本財団が連携協定を結び、日本財団の関連団体として’17年に設立されたこのボラサポに、山田周さんは東京都庁から出向してきた。主催地の東京都、組織委員会、そしてボラサポの三者を結ぶ橋渡し役としてうってつけの人材だ。

「10月から始まったボランティア向けの最初の研修となる共通研修の内容は大きく分けて3つになります。ひとつはボランティアにお渡しするハンドブック。五輪の歴史や大会の概要のほかに、東京2020のビジョンの核でもある、『ダイバーシティ&インクルージョン』(D&I)についても多くのページを割いています。ダイバーシティとは多様性、インクルージョンは包括・包含、受け入れる・活かすという意味です。性別、年齢、国籍、職業、言語、心身の状態などが異なるさまざまな人がチームを組んで活動する機会は、日本ではさほど多くないでしょう。ボランティアの現場で互いの違いを受け入れ、力に変えてほしいと考えています。2つめがeラーニング。車いすユーザーのサポート方法といった、文章だけでは分かりにくい部分を動画で教示するなど充実した内容になっています。ネットで提供するので、いつでも学べます」

ボランティアは主役のひとり。

 そして3つめがField Castが全員参加する集合研修だ。8万人を収容できる会場なんて日本には存在しないが……。

「もちろん一度にやるのは無理です(笑)。1回につき250名から300名が参加し、300回程度の開催を想定しています。3時間程度の講義になりますが、“案内”“アテンド”“ヘルスケア”といった活動分野ごとの実務に関しては来春の分野別研修会でレクチャーを受けますから、集合研修では心構えやオリンピック・パラリンピックの歴史、D&Iなどの大切なポイントをワークショップ等を交えてお伝えしています。付け加えると集合研修の講師の方々に対する事前研修も、じつはボラサポが担っています。数百人を相手とする研修の講師を務めるにあたり、話す内容はもちろんのこと、話し方や発声法、姿勢などについても学ぶ研修を用意しました」

 こうした様々な研修を経て本番で活躍するボランティアは大会をつくりあげる主役のひとりと言えるのだ。

「ボランティアとともに東京2020を成功させるのがボラサポのミッション。それと同時にボランティア文化をレガシーとして日本に根づかせることも念頭に置いています。困っている人々を援助する災害ボランティアの社会貢献はとても意義深いですが、いい意味で楽しめるボランティアがあってもいいと思います。今大会のボランティアにはまさに自分が楽しみたいという理由で参加される方が数多くいます。やってよかった、またやりたいと思ってもらえるようにしっかりサポートしていきます!」

山田周やまだしゅう

1983年12月17日、埼玉県生まれ。静岡大学を卒業後、広告制作会社でセールスプロモーション職に従事。東日本大震災時に広告が一斉自粛でストップする状況を経験し、人の生活を根っこから支えたいと考え'13年に東京都へ転職。東京都では、消費生活行政、文書担当を5年経験。東京2020大会へ向けて街中が盛り上がっていく様子を見て、日本を元気にする可能性を秘めた同大会に関わりたいと異動を希望。'18年から日本財団ボランティアサポートセンターに出向し、研修プログラム作成を担当。

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