オリンピックへの道BACK NUMBER
柔道・角田夏実の大逆転はあるのか。
階級変更を決断させた五輪への執念。
posted2019/10/28 11:15
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
11月2、3日に行なわれる柔道の講道館杯のエントリー選手が発表になった。
中でも目をひいたのは、女子48kg級の角田夏実だ。本来の階級から1つ下げての出場だ。そこに、執念を感じさせる。オリンピック代表への、強い気持ちだ。
角田は、本来は52kg級で戦ってきた選手である。実績も残してきた。2017年の世界選手権では銀メダルを獲得し、翌年のワールドマスターズとアジア大会で優勝を果たしている。
柔道では名門とは言えない東京学芸大学出身。
「(大学を卒業後)柔道をやるなんて考えることはできませんでした」
見える地平も広くはなかった。だが大学で貴重な機会を得た。柔術やサンボを知る卒業生に寝技を学んだのである。
関節技と寝技を武器にするようになると、全国大会で活躍するなど成績も向上していった。結果、実業団で柔道を続ける道が開け、日本代表として国際大会の畳に上がるようになり、世界選手権などにも出て好成績をおさめるまでに至ったのは、先に記したとおりである。
崖っぷちに追い込まれた角田。
だが、そこからが難関だった。52kg級が、日本女子の中でも指折りの激戦区だったからだ。2018、2019年の世界選手権連覇の阿部詩がいて、角田が銀メダルだった2017年の同大会を制した志々目愛と、そうそうたる顔ぶれがそろっていた。
現在、この階級をリードする阿部に対して、角田は3勝1敗と、直接対決では優位に立ってきた。でも国際大会での実績では阿部、志々目の両者と比べると、劣勢とされてきた。
今春もまた、それを味わうことになった。阿部が不在の全日本選抜体重別選手権で志々目を破って優勝したが、今夏の世界選手権代表は阿部に続く2人目として志々目が選ばれたのである。その世界選手権では阿部が優勝。11月下旬に行なわれるグランドスラム大阪で優勝すれば、一定の条件付きながら、五輪代表に内定する。
五輪代表を巡る争いでは、崖っぷちに追い込まれたのである。