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「逃げ」で記録した驚異的な数字。
賞賛すべき横山典弘の感性と腕。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/09/13 17:00
重賞初勝利を驚天動地のレース運びで制したトロワゼトワル。「逃げ」の戦法をとるのもまた、初めてだった。
自らの馬をどう走らせたか。
しかし、そこでもう一歩踏み込んで冷静に判断して欲しい。どれだけ優秀なジョッキーでも、相手の馬まではコントロール出来ない。つまり、もし差されて負けたとしても、それよりも評価しなければいけないのは、自らの馬をどう走らせたか、である。
ハイペースと思しきラップで逃げながらも1分30秒3という好時計で走り切らせてしまった横山典騎手の腕と、そう出来ると考えて乗らせた感性は、最終的な着順にかかわらず褒められてしかるべきではないだろうか。つまり、もし差されていたとしても、今回の騎乗は叩かれるモノではない。たとえ負けていたとしても評価すべき騎乗だったと思えるのだ。
そう考えると世間で考えられる好騎乗と凡騎乗は、実際のそれとは乖離のある紙一重のモノなのかもしれない。いや、ベテランジョッキーの頭の中には「このラップで行っても他馬に差される事はない」という確信があったからこその逃げだったのかもしれないが……。
さて、今週は16日の月曜日に中山競馬場でセントライト記念(GII、芝2200メートル)が行われる。横山典騎手が騎乗を予定しているのはリオンリオン(牡3歳、栗東・松永幹夫厩舎)。息子である横山武史騎手が騎乗した日本ダービーでは前半5ハロンを57秒台で逃げて最後は15着に沈んだ。
果たして父は、舞台を変えた中山でどのようにこのスピード馬を導くのか。その手綱捌きに期待したい。