リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
シミュレーションも抗議も激減。
リーガのVARは成果上々、課題は……。
posted2019/04/27 17:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
ちょっと気が早いけれど、今回はリーガのVAR元年を総括してみたい。まずは数字だ。
4月半ば、バルセロナにて開催されたWorld Soccer Congressのシンポジウムで公表されたデータによると、第31節までの310試合でVARはレフェリーのジャッジに87回介入した。
そのうち半数を越える47回は得点に関わるもので、他の31回はPKを与えるか否かを判断するもの、6回はレッドカードに値するファウルか否かを判断するもの、3回はファウルを犯した選手を特定するものだった。
そしてVARが介入した結果、得点に関しては6.23%、ペナルティボックス内のファウルに関しては4.79%、オフサイドに関しては1.11%、ジャッジミスが減ったという。
「数字はVARがサッカーにどれほどの利益をもたらしているかを表している。完璧ではないけれど、役に立っているのは明らかだ」
壇上で満足げに語ったのはスペインサッカー協会内のレフェリー委員会で会長を務めるベラスコ・カルバーヨだった。
シミュレーションも、抗議も減った。
面白いことに、シミュレーションに対するイエローカードも減っている。昨季は31試合で19枚出されていたのに、今季は6枚だけなので実に68%減である。
「それも明らかにVARのおかげ。人は『観られている』と感じるとルール違反を犯さなくなるものだ」
さらに、レフェリーに対する抗議によるイエローカードも昨季に比べて9.4%減っている。こちらの理由に関しては、バジャドリーのベテランSBハビエル・モジャノがマルカ紙上で説いている。
「抗議によるカードは熱くなっている選手がレフェリーに詰め寄ってもらってしまう訳だが、今季は選手が近づいてきたところでレフェリーがイヤホンを指さしVARに確認することを示すだろ。そこで選手は冷静になるから、最終的に不利なジャッジが下されても、もう激しく抗議はしない。だから減っているんだ」
判定の誤りだけでなく、不要なイエローカードをもらうことまで減ったとなると、VAR導入はレフェリーだけでなく万人にとって正解だったといえるはず。
ところが、VARはことあるごとに物議を醸している。