野球善哉BACK NUMBER
積極性が空回った時にどう戦うか。
作新学院の連覇を阻んだ「負の循環」。
posted2017/08/10 07:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
高校野球はメンタルスポーツであることをあらためて感じた。
9日の第1試合、作新学院(栃木)の夏連覇の夢は初戦でついえた。1回表に幸先よく1点を先制したものの、2回裏に同点に追いつかれると、5回裏に3失点。そのまま1-4で盛岡大付(岩手)に敗れた。
作新学院の連覇を阻んだものは何だったのか。
指揮官の小針崇宏監督は試合後、このように話していた。
「去年のチームとは選手がたくさん入れ替わっていますので、正直追われる立場というわけではなく、新しいチームを作っていこうとスタートしました。ただ、周りは優勝校という目で見てきますし、それに値するような選手、チームであろうと取り組んできました。試合の流れや1球の重要性を感じた試合でした。いろんな負け方がある中で、悔しい負け方のひとつであったと思います」
犠打を使わず攻める姿勢は相手に驚きを与えたことも。
作新学院のチームカラーを端的に言うと、積極的な攻撃的スタイルに尽きる。高校野球の常套作戦である送りバントはあまり使わず、積極的に攻めていく。守備・走塁面でもミスを恐れずに果敢な姿勢を見せていくのが作新学院だった。
それは、2007年に小針監督が就任して以来目指してきたものだった。
2016年センバツ覇者になった智弁学園の小坂将商監督は、友人である小針の野球をこう語っていたことがある。
「自分の場合、普通は無死一塁なら送りバントという野球をしてきたけど、小針の野球はそうじゃなかった。自分はそれまで当たり前に思ってきたのと違う野球があるというのを、作新学院との対戦で教えてもらった」
小坂は2011年夏の準々決勝で、小針の率いる作新学院に敗れている。
今大会の作新学院も、積極性を失ったわけではなかった。
1回表に先頭の相原光星が出塁すると、2番・添田真聖にバントを命じず強攻策に出た(結果は左飛)。その後1死満塁としたのちにワイルドピッチで先制している。
ただその後は、持ち前の積極性が裏目に出た。