野球善哉BACK NUMBER
積極性が空回った時にどう戦うか。
作新学院の連覇を阻んだ「負の循環」。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/08/10 07:00
史上7校目となる夏連覇を成し遂げられなかった作新学院。積極性を貫くことの難しさを感じさせる戦いだった。
サードゴロで併殺を狙うか、確実に本塁アウトか。
2回表にも先頭打者が出塁したが、続く加藤は併殺に打ち取られた。またエンドランを試みてもフライを打ち上げるなど拙攻が続いた。
野球とは難しいもので、こういった場面が続くと相手に流れが渡ってしまう。「走者がスタートを切れなかったり、エンドランでフライを打ちあげてしまったり、攻守両面で流れを引き寄せられなかった」と小針は話した。
噛み合わない流れは守備面にも波及した。
5回裏1死一塁の場面で、盛岡大付は作新学院のお株を奪う強攻策に出てきた。1番・林一樹の安打で1死一、三塁となると、2番・大里昂生の場面でのワイルドピッチで同点。さらに大里にライト前へ運ばれて再び一、三塁とされた。
問題のシーンは、続く3番・植田拓。サードゴロに打ち取った打球を三塁手の中島淳が本塁へ転送して挟殺プレーでアウトにしたのだ。
ただこの場面、作新学院ぐらいのチームなら、三塁走者を無視して併殺を狙う選択肢はあったはずだ。たとえ併殺崩れに終わって1点を失ったとしても得点圏に走者は残らず、ピンチが続くのを避けられるからである。
結果論になってしまうが、2死一、二塁で迎えた次の比嘉賢伸に走者一掃の二塁打を浴び、さらに2失点を喫した。
攻撃でうまくいかず、守備面も積極性を失った?
中島はサードゴロ後の送球についてこう語る。
「あの場面でどちらをアウトにするのかは、点差や展開にもよると思いますけど、あの場面では同点だったので、1点を守りに行くという選択でした。今思えば打球が速かったので、併殺を狙いにいってよかったかなと思います」
確かに“今思えば”なのである。
冷静に考えれば大量失点を防ぐ選択がベターだったかもしれないが、「そこはベンチが指示しきれなかった」と小針監督が話すように、一瞬の判断の中では難しい選択である。中島の言葉からは、作新学院が置かれていた精神状態をうかがい知ることができる。
「攻撃面での積極性が上手くいかなかったので、守備面でも積極的にいけなかったのかなと思います。5回裏1死から内野安打を許した場面では遊撃手がボールを弾きましたが、その前に僕がダイビングしてでも取りに行くべきでした。積極的に行けなかった」