濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「大晦日の火は絶やさない!」
DEEPが守る格闘技の“年中行事”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byHisao Yamaguchi
posted2014/11/03 10:40
TDCホール大会、廣田瑞人(上)は左フックでよろめいた今成を逃さずパウンドで勝利をおさめた。
「何をやるかというより、とにかく“やる”ということ」
そうならないために、DEEPは大晦日のさいたまに進出する。「何をやるかというより、とにかく“やる”ということです」とは、会見での佐伯代表の言葉だ。格闘技ファンへのメッセージを求められると、苦笑いしながらこう言った。「みなさん、助けてください」。
大晦日といえば、テレビ中継を前提とした話題作りのマッチメイクもつきものだった。K-1では曙がボブ・サップと闘い、PRIDEでも俳優の金子賢が出場している。だがDEEPの大晦日は、地に足のついたものになりそうだ。軸となるのはタイトルマッチ、パンクラスとの対抗戦、それに海外勢に若い日本人選手がチャレンジする試合。「無茶なことをやるよりも、いま日本で頑張っている選手と一緒に作っていきたい」(佐伯代表)というのが基本的な方針だ。
ただ、だからといってDEEP大晦日興行が“世間的知名度のない選手ばかりの、地味で退屈な興行”になるというわけではない。今の日本格闘技界にも、どこに出しても恥ずかしくない選手が数多くいる。
過去から続く伝統を絶やさないために。
“ROAD to さいたま”の意味合いもあった10.26TDCホール大会では、UFC参戦経験もある廣田瑞人が絶大なインパクトを残した。DEEP2階級制覇の今成正和を豪快なパウンドでKO。今成は相手を下から寝技に引き込んでの関節技を十八番としているので、相手の土俵に踏み込んで勝ったことになる。試合後、「こうなると分かってましたよ。相手がやることはいつも同じなんで」とこともなげに語る姿にも凄味があった。
佐伯代表によると、廣田とバンタム級王者・大塚隆史は大晦日“当確”。既に参戦が発表されている北岡悟(ライト級王者)、横田一則(フェザー級王者)、元谷友貴(フライ級王者)、長倉立尚も合わせ、日本を代表するファイターたちだと言っていい。
DEEPの大晦日さいたまスーパーアリーナ大会は、過去から続く伝統を絶やさないためのものだ。そして同時に、今の日本格闘技界が持つ底力を試そうとするものでもある。「日本で頑張っている選手たち」とともに、そしてファンとともに作り上げる大晦日。黄金時代と様相は変わっても、特別な一日であることは同じだ。