濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「大晦日の火は絶やさない!」
DEEPが守る格闘技の“年中行事”。
posted2014/11/03 10:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Hisao Yamaguchi
これまで後楽園ホールをベースに活動してきたMMAイベントDEEPが、団体史上最大のビッグイベントを“決行”することになった。題して「DEEP DREAM IMPACT 2014 大晦日SPECIAL」。会場はさいたまスーパーアリーナ、開催日は12月31日である。
大晦日のさいたまは、格闘技ファンにとって特別な日、特別な会場だ。かつては「PRIDE 男祭り」が行なわれ、DREAMも大晦日興行を引き継いだ。格闘技を見て年を越すのが“年中行事”だったのである。だがDREAMは一昨年の大晦日以降、活動休止状態に。昨年の大晦日、さいたまは“空き家”となった。
大晦日の“聖地”に、手を挙げたDEEPの佐伯繁代表。
そこで手を挙げたのが、DEEPの佐伯繁代表だった。
「誰もやらないなら、俺がやるしかない」
開催発表は10月に入ってから。スポンサーもテレビ中継も決まっていないところからのスタートだ。PRIDE武士道やDREAMにもスタッフとして関わってきた佐伯代表だが、自分でプロデュースするとなると勝手が違う。会場を下見した際も「まったく(大会当日の)イメージが湧かなかった」という。
しかも、DEEPのスケジュールは通常興行でびっしりと埋まっている。10月26日がTDCホール大会。11月3日には新宿FACEで女子格闘技イベントDEEP JEWELSが待っている。大晦日の10日前、12月21日にもディファ有明で2大タイトルマッチ。開催発表の記者会見を終えると、佐伯代表はこうつぶやいていた。
「とりあえず今はTDCのパンフレット作らなきゃ。JEWELSもディファも手を抜けないしね……」
そんな状況にもかかわらず大晦日開催を決めたのは、「大晦日のさいたまを格闘技のために死守しなければいけない」という思いからだ。会場使用権が他のイベント、たとえばバンドやアイドルの年越しなどのライブに移れば、おそらく二度と格闘技界には戻ってこない。エメリヤーエンコ・ヒョードルやヴァンダレイ・シウバや五味隆典が激闘を展開した特別な伝統が失われてしまう。