カメラマンが語る:スポーツ写真の魅力とはBACK NUMBER

自分の心が震える光景を写真に撮りたい。 

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福本悠

福本悠Yu Fukumoto

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photograph byAtsushi Kondo

posted2010/06/10 12:00

自分の心が震える光景を写真に撮りたい。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo
世界各地で“サッカーのある風景”を撮り続けるプロカメラマン・近藤篤。
彼はなぜサッカーにこだわり、写真を撮り続けるのか。その思いを聞いた。

 ギリシャではリフティングをする司祭を、アルゼンチンでは草サッカーに興じる男たちを……。

 プロカメラマン・近藤篤は生活のなかに息づく「サッカーのある風景」を切りとってきた。世界のあらゆるところで、さまざまな人々がサッカーにかかわり、今を生きている。その写真は、見るものにサッカーの持つ力や魅力を感じさせてくれる。

 しかし、近藤自身は「写真を通して人にメッセージを伝えたいと思ったことはない」と言う。「意識しているのはどうやっていい写真を撮るかだけだ」と。

「自分がいいな! と思って心震える様な景色を見たら写真に撮りたいと思うし、撮ったら人に見せたいって考えるでしょ。ただ、それだけ。でも、結果的に写真を見て、サッカーっていいよねと感じてくれる人がいるってことは、僕が思う“素敵な光景”が伝わっているんだと思ってます」

「芝生に石が2個置いてあるだけで、ピピッと感じる(笑)」

 近藤にとってサッカーは、プロカメラマンとして一番心惹かれるもののひとつであり、身体に染みついているものでもある。

「町を歩いていてもプレーしていた痕跡があるとすぐに分かる。芝生に石が2個置いてあるだけで、ピピッと感じる(笑)。ここでボールを蹴っている光景がいいなって思ったら、人が来るまで半日ぐらい待ったりする」

 海外でサッカーを撮るときに感じるのは“サッカーに対する思い”の違い。

「アルゼンチンで感じたのは、向こうの人はとにかく怒る。草サッカーでも、審判がミスジャッジをしたら怒り、シュートミスした選手にも怒る。でも、点を決めたらすごく喜ぶ。日本とは日常生活の中で“サッカー”が意味するものが全然違うんだなって思った」

 それでも、近藤は言う。

「日本ではサッカーがまだそこまで根付いているわけではない。そんな日本でも、サッカーってすごく素敵だな、と思える写真が撮れれば完璧だよね」

写真 路上でボールを使ってパフォーマンスをする若者。チリの街角で撮影した「サッカーのある風景」
1963年、愛媛県今治市生まれ。'86年に上智大学外国語学部スペイン語学科卒業。その後、中南米に渡る。ブエノスアイレスにて写真を撮り始め、8年間をアルゼンチンで過ごす。マラドーナを撮った写真が『フランス・フットボール』誌の表紙を飾り、注目を集める。'94年に帰国。現在は小誌をはじめさまざまな雑誌で幅広く活動。最近は写真撮影だけでなく、原稿執筆でも活躍中。

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