Column from SpainBACK NUMBER
データが物語るリーガの行方。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byDaisuke Nakashima
posted2009/04/05 07:00
リーガの残り10節地点は節目であり、43年前から毎シーズン、このタイミングでサッカーくじの専門家が優勝の最終予想をしている。
そこで筆者も未来を読んでみた。
優勝は……ずばり、バルセロナ。6ポイント差まで迫ってきたレアル・マドリーは、そのまま2位で終わるでしょう……。
まったく面白みのない予想で恐縮だが、両チームの直近の試合ぶりを見たところ、こう思うに至ったのだから仕方がない
第27節、バルセロナは6-0でマラガを下した。今季の公式戦4度目となる一試合6得点。5得点以上となると、なんと9度目。
呆れるばかりの得点力だが、この日最も印象的だったのはそこではなく、改めて感じたチームとしての完成度だ。
バルセロナの選手はどんなサッカーを、なぜ、どういう手段をもってするのか、しっかり理解している。そのため、いるべきところに必ず誰かがいて、さらっとパスが繋がり、ずどんとゴールが決まる。イニエスタ-エトー-シャビとボールが渡った1点目のシーンはまさにそうだった。
最後尾から最前線までが非常にコンパクトな陣形も、全員がわかっているから崩れない。よって、うまく攻め、うまく守れる。「バルセロナはディフェンスが弱い」という声をしばしば耳にするけれど、今シーズンのチームについて本当に特筆すべきは、攻撃力ではなく守備力の方だ。失点だけみても、あれだけ攻めるサッカーをしながら、リーガでは最も少ないのだから。
バルサ有利だが、レアルの追撃はどうなのか?
一方で、レアル・マドリーも同節はアルメリアを3-0で破った。
これで13試合負けなし。3得点も、バルセロナの6点には及ばないが立派なものだ。
しかし、拍手に値するのはそこまで。試合自体は、観ている者にとっては非常に退屈。特に前半は酷く、ハーフタイムを告げる笛とともにスタンドの観客は指笛を鳴らして、不満を顕わにしていた。
それでも勝ったのだから構わないじゃないか。
確かにそうだ。勝敗は、プレーの面白さで決まるわけじゃない。
だが、勝ち負け以外で試合を楽しませてくれる要素——たとえば淀みないパス廻しや、ぴったり息の合ったコンビネーション、鮮やかなサイドチェンジといったものは、結局のところ、チームの力だ。全て、個人ではなく集団でゴールを狙うための技であり工夫。だから、観客を喜ばせるためではなく勝つために、どんどんやってみせるべきである。
ところが、いまのレアル・マドリーにはそれが難しい。中盤が弱く、パスミスが呆れるほど多い上、チームの大本のコンセプトが選手に浸透していないからだろう。
今後10試合で6ポイント差を引っ繰り返さねばならないレアル・マドリーにとって、この地力不足は痛い。残りのカードと、4-0の惨敗を喫したCLリヴァプール戦を重ねて考えると、致命的とも言える。バルセロナとの直接対決はサンティアゴ・ベルナベウで行われるからまだいいが、セビージャ、ビジャレアル、バレンシアとの対戦は全てアウェーゲームなのだ。これで全戦必勝は厳しい。
バルセロナに対し、レアル・マドリーが有利な点もひとつだけある。残りの試合数である。
あちらはチャンピオンズリーグと国王杯の決勝を入れて最少で13試合、最多で16試合しなければならないけれど、レアル・マドリーはリーガの10試合だけ。バルセロナが肉体的・精神的に消耗し、何度か躓いてくれたら、ゴール前ギリギリで差せる可能性はある。ただし、その場合も10戦全勝は必須だから、逆転が難しいのは変わらない。
バルセロナは、やはり逃げ切るだろう。
ちなみにサッカーくじの専門家リカルド・パストールも優勝はバルセロナにしていた。これまで42年間、彼の予想が外れたのはたったの4度しかない。
ついでに過去のデータも挙げておくと、1勝が3ポイントになった95-96シーズン以降、2位に6ポイント以上の差をつけて“残り10節ライン”を越えたチームは、全て優勝している。