プロ野球偏愛月報BACK NUMBER

高校生「ビッグ3」の今後。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

posted2007/10/17 00:00

 高校生ドラフトは10月3日に行われ、20年に1人の逸材と言われる中田翔(大阪桐蔭・外野手)は日本ハムに、佐藤由規(仙台育英)、唐川侑己(成田)の本格派投手はそれぞれヤクルト、ロッテから1巡目指名を受けた。指名後のトラブルもなく、このまますんなり入団することは間違いない。ここで、彼らにはどういうプロ生活が待っているのか、簡単に推察していくことにする。

◇中田翔(日本ハム)

 中田は三塁手への挑戦を宣言しているが、これはチーム事情を非常によくわかっている発言である。今守っている外野は工藤隆人、森本稀哲、稲葉篤紀がいて、とても割り込む余地はない。小谷野栄一が守っている三塁、セギノールが守ることが多い一塁が、1年目から割り込めるポジションであることは明白。三塁と一塁、どっちのほうに対応力があるかだが、ディフェンスに対する意識が高い選手なので、どちらにも対応していくと思う。チームとしては、今季92安打を放った小谷野をそのままにして、セギノールをDHにする構想で、中田を一塁で起用したいと思っているはずである。成績は100試合以上起用されれば、20 本くらいのホームランは打てる。

◇佐藤由規(ヤクルト)

 即戦力の期待を担っている佐藤。140キロ前後のスライダーの威力、155キロを超えるストレートの威力だけ見れば即戦力の期待をかけるのは当然。あとは投球フォームの矯正がどれだけ進むかで、佐藤の1年目が決まる。視点を変えて、ヤクルトの若手投手陣に目を向けると、有望株が目白押しである(*印は左腕)。

  松岡健一(25歳) 11試合 4勝2敗
  増渕竜義(19歳) 6試合 1勝1敗
村中恭兵(20歳) 9試合 1勝3敗(ファーム成績)
  高市 俊(23歳) 2試合 0勝1敗
丸山貴史(21歳) 23試合 2勝5敗(ファーム成績)

 古田敦也監督のベテラン重視が祟って登板機会が少なかった選手ばかりだが、松岡は後半戦に勝ち星を積み上げ、増渕も高校卒1年目で早くもプロ1勝を挙げた将来のエース候補。さらに村中は星野ジャパンに選ばれ、松下電器との壮行試合ではストレートが149キロを計測した本格派。高市はプロでの成功率が高い東都大学リーグで3季連続MVPに輝いた投手で、大学時代はスキのないピッチングを展開した。そして丸山はプロ2年目の昨年、初勝利を挙げている技巧派である。

 彼ら若手が新監督のもと波に乗っていければ、佐藤を抜擢しようという機運も盛り上がるはず。ただし、そういう機運が生まれなければ佐藤の一軍抜擢は2年目以降に持ち越されると思う。

◇唐川侑己(ロッテ)

 ヤクルトとは反対に高校卒選手の早い起用が目立つ球団である。ただ、日本ハムほどそれが目立たないのは、ドラフトでの高校生の指名が多くなかったからだ。これはスカウティング云々ではなく、フロント上層部のチーム作りの方針が即戦力志向に針が振れていたためである。それでも成瀬善久がプロ3年目で5勝を挙げ、4年目の今季は最優秀防御率、最優秀勝率の2冠を獲得するほどの投手になった。成瀬の高校時代の低い評価を思い返せば、よくここまで育て上げたと感心する。

 唐川は佐藤ほど投球フォームにクセがないので、プロ仕様に仕上がるのも早いはずだ。心配なのは体作りの未発達。スカウト氏に聞いた話だが、唐川は高校時代、投げ込みが1週間で1回だけだったという。これは今でも破格の少なさで驚かされる。プロで早い時期に抜擢されるためには、まずプロの練習に耐え得る体作りをしなければならない。佐藤同様、プロ1年目というより2年目以降の活躍をめざしたほうがいい。

中田翔
由規
唐川侑己

プロ野球の前後の記事

ページトップ