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奮闘する「オーバー35歳」たち。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byKazuya Gondo/AFLO

posted2004/09/29 00:00

奮闘する「オーバー35歳」たち。<Number Web> photograph by Kazuya Gondo/AFLO

  チームが進化するためには若手選手が頭角を現してくることが不可欠であり、当然のごとく、どのチームも若返りに注力している。セリエAでは、パルマとレッチェが2年前から「若手育成プロジェクト」を実施。年々、優秀なジョカトーリ(選手たち)を輩出していることに、他クラブの幹部たちも関心を高めている。

 またローマも今シーズン、U−21欧州選手権でイタリアを優勝に導いたMFデロッシ(21歳)、MFアクイラーティ(20歳)、さらには期待の若手として注目を浴びているフランス人のDFメクセス(22歳)をレギュラーに据え、平均年齢を一挙に下げた。

 20歳そこそこの選手の躍動は微笑ましいし、有望な彼らの前途にサポーターも期待も寄せる。だが、彼ら以上にみなぎるパワーで今季のセリエAにおいて奮起しているのは、35歳以上の現役選手なのである。シーズン開幕早々、「ジオ(おじさん)」と呼ばれるベテラン選手たちが、各々の所属するチームに貴重な勝利をもたらしている。7年ぶりにセリエAに帰還したラツィオのFWディカーニオ(36歳)、カリャリのFWゾラ(38歳)は、開幕戦を白星で飾るべく、持ち前の粘りのあるプレーで90分間チームを牽引した。

 今シーズンのセリエAには、35歳以上の選手たちが20人もトップチームに登録されている。そのうち、最年長である1966年生まれの選手6人は揃ってレギュラーであり、ミランの第3キーパーであるフィオーリを除く19人が、主力選手として活躍している。いつ引退してもおかしくない年齢である彼らが今でも奮闘している事実は、同世代である私にとって、ことさら嬉しい。

 以前にも述べたが、現代のサッカーは攻撃的であることが好まれ、単なるスピードだけではなく、果敢に前線へと進出するプレーが重視されることから、どのポジションにも豊富な運動量が求められる。ディカーニオやゾラもセカンドストライカーである以上、決定機を生み出すファンタジスタ的な要素を持つことが不可欠だが、加えてピッチ上を前後左右に動き回れる軽快な足が必要となってくる。年齢を感じさせないプレーを見せる、彼ら「オーバー35歳」のストライカーたちに脱帽する。

 同様にDFフェラーラ(37歳・ユベントス)、DFミハイロビッチ(35歳・インテル)、DFマルディーニ(36歳・ミラン)、DFコスタクルタ(38歳・ミラン)のように欧州チャンピオンズリーグといった大事なカップ戦に臨んでいる選手たちも、過密スケジュールに対応できる持久力を備えていおり、まさに鉄人だ。

 リボルノのFWプロッティ(37歳)は、「点が取れない理由を年齢のせいにしようとすると、人は『だったら現役を引退すれば?』と聞く耳をもってくれない」と、「オーバー35歳」を言い訳にすることはできないと話す。また、「勝つために必要なのは若さではなくモチベーション」と、現在37歳のベテランキーパー、パリウーカ(ボローニャ)の一言に、かつて納得させられたのを思い出す。

 9月12日のフィオレンティーナ戦と15日の欧州チャンピオンズリーグ・ディナモ・キエフ戦において、ローマの一流若手選手であるFWカッサーノ(22歳)とDFメクセスの愚行が、レッドカードの対象となった。テンションが高くなると冷静さを失うヤングプレーヤーたちのアンフェアな態度を見て情けなくなり、反対に、我慢することの大切さを知っているベテランのフェアプレーを再認識して欲しいと思った。若手選手がいかに重宝されようとも、今シーズンのセリエAの魅力は、若獅子と「ジオ」による競演ではないだろうか?

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