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勝負の方法を知る国。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/06/19 00:00

勝負の方法を知る国。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 今年6月のツーロン国際で、レアル・マドリーのスカウトがこんなことを言っていた。

「スウェーデンと戦いたいなんて国は欧州にはない。ヤツらのFWはGKと1対1になっても決めることはできないが、セットプレーとなると抜群の勝負強さを発揮するんだ」

 C組の第2戦イタリア対スウェーデンは、まさにそんな展開になった。

 前半は完全にイタリアのペースになった。その理由は、スウェーデンの左MFのリュングベリが、王様のようなプレーをしたからだ。チームのバランスを無視して中央に位置したり、守備に戻らなかったり。それによってイタリアの右サイドバックのパヌッチがフリーになり、前半37分のイタリアの得点シーンも右サイドをパヌッチが崩して挙げたクロスをカッサーノがバックヘッドで決めたものだった。

 スウェーデンの良さは、背の高さだけでなく、勤勉なプレースタイルにある。だが、精密機械がたったひとつ歯車が欠けたら動かないように、リュングベリひとりが怠けていたために、スウェーデンは機能しなくなっていた。

 だが、追い詰められたスウェーデンを救ったのは、やはりセットプレーだった。後半40分、スウェーデンの左CKが右に流れ、そのボールを再び中に折り返したこぼれ球を、イブラヒモビッチが後ろ回し蹴りをするかのように右足でボールをゴールに叩き込んだ。スウェーデンは残り5分でイタリアに追いつくことに成功し、試合はそのまま1対1で終了した。

 イタリアは“つば吐き”行為で3試合出場停止になったトッティの穴をカッサーノが埋めたが、勝つことはできなかった。これでC組ではスウェーデンとデンマークが勝ち点4になり、イタリアは勝ち点2。イタリアがグループリーグを突破するためには、3試合目でブルガリアに絶対に勝たなくてはいけなくなった。

 “バイキングの角”を、決して侮ってはいけない。スウェーデンは、ドイツとは違う意味で、真剣勝負のやり方を知っている国なのである。

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