EURO2004 速報レポートBACK NUMBER
ルーニーの2ゴールで、難なく3ポイント
text by
西部謙司Kenji Nishibe
photograph byGetty Images/AFLO
posted2004/06/18 00:00
イングランドが何事もなくスイスを下した。序盤はハカン・ヤキンのパス、精度の高いセットプレーでスイスもペースをつかみかけたが、23分にジェラード、ベッカム、オーウェンとつないでルーニーがゴール。長距離ドリブルで右サイドに出たジェラードは、右サイドをオーバーラップしたネビルを使わずにベッカムへ戻す。ベッカムは狙いすましてファーサイドでフリーのオーウェンへ。オーウェンは一度右足に持ち直してシュートコースを伺いながら中央へ短いロブ、これをルーニーがヘディングで押し込んだ。ルーニーの外側にはスコールズも詰めていて、このチームの攻撃に入ったときの連動性の高さがうかがえる先制ゴールだった。
その後もイングランドがベッカムのインチパスを生かした組み立てでチャンスを作る。暑さのせいか守備はかなり緩めだったが、スイスはそこにつけ込むことができない。後半、スイスは動きの鈍いシャプイサに代えてギガックスを投入。さらにボランチにテクニックのあるカバナスを入れたが大勢に影響なし。イングランドはベッカム、ジェラード、ルーニー、ランパードが絡む合い、流れるようなパスワークでゴールチャンスを作るなど、完全にゲームを支配。60分にはハースが2枚目のイエローカードで退場し、スイスはますます窮地に追い込まれた。
70分、エリクソン監督はスコールズに代えてハーグリーブスを投入。スイスの頼みの綱であるハカン・ヤキンを抑えにかかる。さらに、今一つ本来のキレを欠くオーウェンに代えてバッセル。そのバッセルが2点目のきっかけを作った。ベッカムから前線のバッセルへ長いカウンターのパス、これをDFと競りながら巧みにマイボールに収めたバッセルが、左のルーニーへ。DFと1対1になったルーニーは抜ききらずに空いたコースへ右足で思い切りのいいシュート。これがGKの手を弾いて2点目となった。前線でボールを“追えて”競り合いに強いバッセルは重要な交代要員となっている。
82分には美しい3点目が入る。ボールキープに入ったイングランドが前後にパスを回す。左サイドのジェラードから右のベッカムへ見事なサイドチェンジが通り、ベッカムの後方にいたネビルが一気に30メートルを駆け上がる。少しタメたベッカムがオーバーラップしたネビルにパス、ペナルティーエリアに侵入したネビルはGKとDFの間に低いクロスを通し、ジェラードがファーポストに詰めて押し込んだ。ボール回しの後に、左右の揺さぶりと前後の変化をつけ、最終的にはジェラードが全くのフリー。スケールの大きいゴールシーンだった。
エースのオーウェンに元気がないのは気になるが、イングランドの中盤のタレントは大会でも屈指。弱点はGKと相手ゴール前で高さがないこと。かつてのイングランドとは長所と欠点がまるで反対なのが面白い。