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ドイツ、まさかのスコアレスドロー 

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/06/20 00:00

ドイツ、まさかのスコアレスドロー<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ほろ酔い加減のドイツ人の顔色が、みるみるうちに青ざめていった。無理もない。勝ち点3を間違いなく獲得できるはずのラトビア戦で、思いもよらない苦戦を強いられたのだから。いったいだれが、スコアレスドローに終わるなどと予想しただろうか。

 ボールを6割以上支配し、後半のほとんどの時間帯をラトビア陣営で進めたことは戦前の予想通りだった。だが、ドイツの攻めはミドルシュートとクロス以外に何もなく、それがことごとく弾き返されると打つ手を失ってしまった。

 ボールはバラックを経由して、両サイドにバランスよく振り分けられ、その数秒後には決まってゴール前にクロスが上がる。だが、結末もいつも同じ。決まってラトビアの守備陣に弾き返されてしまう。

 後半、シュナイダーに代わって投入されたシュバインシュタイガーが活発な動きで左右の起点となり、ラームが積極的に左サイドを駆け上がるシーンが増えると、ラトビアの動きが明らかに鈍くなったこともあって、ゴールの予感は次第に高まった。だが、クロス一辺倒の攻めは最後まで変わらない。ドリブルで中央突破を狙う選手も、FWを追い越す動きをする選手もいない。これでは弱小国に守り倒されても致し方ない。

 ドイツはたしかに不甲斐なかった。だが、ラトビアが素晴らしいパフォーマンスを見せたことも事実である。前半は互角に近い戦いを見せ、この試合最大のチャンスも実は彼らがつかんでいる。40分、シュートはカーンに抑えられたが、FWベルパコフスキスが単独でドイツ守備陣を打ち破り、GKカーンとの1対1を迎えた。

 驚異的な集中力で、ドイツの力攻めに耐え抜いた守備陣の健闘は特筆に価する。後半はボールを追いかけることしかできなくなり、クリアボールもすぐにお辞儀するほど消耗していたが、GKコリンコ、CBシュテパノフスらが、ボロ雑巾のように疲れ果てたイレブンを最後まで鼓舞しつづけた。

 長い長い93分間を終え、彼らはまるで優勝したかのように喜びあい、ファンとともに長々と歓喜を分かち合っていた。

 ドイツ人たちが、背中を丸めて恥ずかしそうに退場していく。ドイツはもはや、名前だけで対戦相手を畏怖させることもできなくなっている。

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