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「監督が1人ですべてをやらない」森保一監督がたどりついた組織論…明かされる森保ジャパンの”静かな変革”「東大・筑波大約40名の分析チーム編成まで」
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木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAsami Enomoto
posted2025/12/31 11:07
NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)
「攻撃担当、守備担当と分けると、切り替え(トランジション)の部分が分断されますが、ナナとトシが非常に良くコミュニケーションを取ってくれている。守備から攻撃に変わったときはこうだよね、という感じで。日本が世界で勝っていくうえで切り替えが極めて大事。どちらがどうやって選手にプレゼンするかも含めて、確認しながらやってくれています。彼らのすごさを日々感じていますよ」
「ナナ、トシに『どう思う?』と質問する」
試合中、日本代表のベンチでは森保、名波、齊藤の順番で座るのが定番の並びだ。
テレビでは森保と名波が相談している場面がよく映される。ただし森保によれば、攻撃に関して相談するときは名波、守備に関して相談するときは齊藤に話をするのだという。
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「基本的に攻撃のことはナナに、守備のことはトシに相談しています。話し方としては自分の決定を伝えるのではなく、『どう思う?』と質問することが多いですね。その方がコーチも自由に意見を言えますから。
ナナの方がトシより1歳上ですが、すごくトシを立てている印象です。ベンチで攻撃について話すときも、ナナから『トシ、どう思う?』と言って議論の輪に入れることが多いですよ」
「東大&筑波大約40名の分析チームをまとめる」
再び話を分析官に戻そう。
森保ジャパンではW杯に向けて、東京大学と筑波大学の学生による40名ほどの分析チームの編成を急ピッチで進めている。
2024年にカタールで開催されたアジアカップで試みがスタートし、中下分析官がまとめ役を担っている。
「東大の大学生と筑波大の学生にグループをつくってもらい、対戦する可能性がある国や個人の情報収集をしてもらっています。中下が中心になって組織づくりをしています」
また、代表ウィークでは寺門と若林が交互に対戦相手を分析していたが、W杯では分析官4人(寺門、若林、中下、渡邉)が持ち回りで対戦相手を分析する考えもあるという。
「W杯では試合ごとに分析担当をローテーションする予定なので、寺門と若林にサポートしてもらいながら、現在、中下と渡邉にも相手分析と選手へのプレゼンテーションを担ってもらっている部分もあります。
対戦相手を分析した本人をベンチに入れるという取り組みも始めました。事前にコーチ陣にインプットしてくれていますが、システムが変化したときや選手の配置が変わったときに、分析した本人がいた方が話が早い。W杯に向けて何が最適か、コーチ陣と話し合いながらいろいろなことをトライしています」
森保による「静かな変革」。ここまで緻密にチームと組織をつくりあげている代表は他にないのではないか。
あらゆる人たちの想像を超えるために、森保はW杯本番ぎりぎりまで最善を追い求めるはずだ。


