誰も知らない森保一BACK NUMBER
「監督が1人ですべてをやらない」森保一監督がたどりついた組織論…明かされる森保ジャパンの”静かな変革”「東大・筑波大約40名の分析チーム編成まで」
posted2025/12/31 11:07
NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)
text by

木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Asami Enomoto
◆◆◆
日本代表の森保一監督は「静かな変革」を好む指揮官だ。
2022年カタールW杯最終予選のオーストラリア戦では4−3−3に変更するという抜本的改革をしたこともあったが、そういうケースは稀だ。外部の人間には気づかせず、内部で納得感を醸成しながら、密かに着実にチームを変えていくことを基本としている。
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たとえばカタールW杯初戦のドイツ戦後半に3バックに変更して多くの人を驚かせたが、そこにいたるまでの親善試合の終盤にしばしば3バックをテストしていた。森保にとってはそれが仮想演習だったのである。
W杯に向けたプロセスで、対戦相手に悟られないように策を仕込んでいく。生粋の勝負師である。
「監督が1人で抱えない」
それはどうやらスタッフマネジメントに関しても同じらしい。
2026年W杯に向けて少しずつ新しい取り組みを続け、さまざまな機能を持つ集団になってきたのだ。今回の原稿では森保の知られざるスタッフマネジメントについて掘り下げたいと思う。
まずは前提知識として、森保ジャパンにおけるコーチ陣の役割分担をおさらいしたい。
2022年カタールW杯最終予選の途中から、森保は段階的にコーチに権限を割り振っていった。それによって横内昭展コーチが攻撃、齊藤俊秀コーチが守備、上野優作コーチがセットプレーの攻撃、下田崇GKコーチがセットプレーの守備を担当する体制が完成した。
カタールW杯後の第二期政権ではこのモデルをさらに発展させ、森保は「マネジメント型監督」を公言するようになる。横内と上野がJリーグに活躍の場を移したため、新たに名波浩が攻撃担当、前田遼一がセットプレーの攻撃担当としてコーチに就任した。そして2024年8月に長谷部誠がコーチ陣に加わった。
森保は役割分担する意図を次のように明かした。
「すべては勝つ確率を上げるためです。監督が攻撃、守備、セットプレー攻撃、セットプレー守備の4つすべてをやるより、担当があった方がより広くより深く情報収集できる。監督が1人でやるより間違いなく質が高まります。


