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森保一監督「私はボキャブラリーが多いほうではない」ブラジル戦大逆転劇を生んだ、”森保ノート”の中身とは…「“今日はメディアが80人”とかまで書く」
posted2025/12/31 11:00
NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)
text by

木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Asami Enomoto
◆◆◆
日本代表の森保一監督が試合中にメモを取ることは、普段サッカーをあまり見ない人たちにもよく知られた話だろう。
メモはロッカールームにおけるスピーチや、戦術変更に活用される。カタールW杯では海外でも話題になり、2023年6月には日本サッカー協会から公式グッズとして「森保監督監修A6ノート」が発売された。
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ただし、試合中だけでなく、練習中にもノートを取り出してメモを書いている姿はあまり知られていないのではないだろうか。
日本代表の練習中に森保を観察していると、何かをひらめいたような顔つきでノートを取り出し、一心不乱に書き込んでいる場面をよく目にする。まるで作家が作品のアイデアを思いついて書き留めるような素振りだ。
「“今日はメディアが80人”とか…」
「練習中に試合の采配をひらめいて書き留めているのでは?」
そう問うと、森保は冗談を交えて答えた。
「そうですね。練習は基本的にコーチ陣が指導してくれるので、私は練習を見ながら『ここが次の試合のポイントになる』とか、『これは次の試合に生きる』とか、『この練習で起こったことを修正しておかないといけないな』といったアイデアや気づきをメモしています。
あとは練習中に気づいたちょっとしたことですね。『今日はメディアが80人』とか。かなり正確だと思いますよ(笑)」
森保が「修正点メモ」の例としてあげたのが、前々回の連載で取り上げたブラジル戦に向けたミドルブロックの戦術練習だ。
ブラジル戦に向けて「ハイプレス→ミドルブロック」というプランを用意したが、戦術練習ではまずミドルブロックに取り組んだ。優先的にやった戦術が選手たちの頭に残りやすく、ハイプレスの印象が薄れる可能性があった。森保はその懸念点をメモし、あとでコーチに共有した。
「ブラジル戦前の練習がまさにそうでしたね。『こういうことが起こるかも』ということをメモして、自分の中にしまっておくこともあれば、コーチに伝えることもある。選手に個別に伝えるときもありますね」
あのブラジル戦前に浮かんだ「フレーズ」
こういう「森保ノート」の原点は18歳まで遡る。ノートを使い始めたのは、高校卒業後にマツダ(現サンフレッチェ広島)に入団してからだった。


