「監督が1人ですべてをやらない」森保一監督がたどりついた組織論…明かされる森保ジャパンの”静かな変革”「東大・筑波大約40名の分析チーム編成まで」 

　特に代表の場合、2、3日前に集合して試合をする場合がほとんどです。クラブチームであれば3、4週間の合宿があり、年間を通してブラッシュアップできますが、代表ではそうはいかない。さらに約10日間の代表活動期間中、広報活動があったり、メディカルと相談したり、指導以外のタスクも多い。各担当者に突き詰めてもらい、さらにその本人から選手に伝えてもらった方が、より深く浸透すると考えました」

新ポジション「セットプレー分析担当」

　そして、森保はさまざまなポジションを新設している。たとえば新たに「セットプレー担当分析官」を導入した。

　日本代表には寺門大輔、中下征樹、若林大智、渡邉秀朗という4人のテクニカルスタッフ（分析官）がいる。そのなかで最も若い渡邉を「セットプレー分析担当」に任命したのだ。

©Asami Enomoto

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「W杯予選でも、親善試合でも、代表ウィークはだいたい2試合があります。寺門と若林がそれぞれ1カ国ずつ対戦相手を分析する体制でやってきました。選手へのプレゼンも彼らにやってもらっています。中下と渡邉がテクニカル全体をフォローします。

　また、中下にはW杯の決勝トーナメントを見据えて、対戦の可能性がある国を分析し、どうやって自分たちがトーナメントで力を発揮していくかをプランニングしてもらっています。

　そして渡邉にはセットプレーの分析も任せています。対戦相手のセットプレーを分析して、コーチ陣に傾向と対策を伝えてくれています」

　前田コーチと渡邉分析官がタッグを組むことで、現在セットプレーは日本代表の大きな武器になっている。

前田遼一コーチ（前列左）はセットプレーの攻撃を担当している　©AFLO

　2025年10月のパラグアイ戦の同点ゴールはFKの流れから生まれ、続くブラジル戦の上田綺世の決勝点はCKから生まれた。相手の目線を誘導するトリックだけでなく、相手をブロックしてスペースを作るといった連係が機能している。

「渡邉のサポートを受けながら、遼一（前田コーチ）が結果を出すためにどういう準備をしなければいけないか突き詰めてくれている。その熱意が選手たちにも伝わっていると思います。セットプレーの選択肢は確実に増えていますよ。

　セットプレーの攻撃については、ナナ（名波コーチ）の貢献も大きいです。遼一がナナに意見を求めて、ナナがすごくいいアドバイスをしている。一方、セットプレーの守備においてはトシ（齊藤コーチ）とシモ（下田コーチ）がコミュニケーションを取って何が最善かを考えてくれています」

　スタッフの役割分担を機能させるうえで、コミュニケーションは最も大事な要素だろう。各自が担当範囲しか考えず派閥主義に陥ると、組織がバラバラになってしまう。

　だが、森保ジャパンにおいてその心配はないだろう。コーチたちが頻繁に話し合いを行っているからだ。

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