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創立100周年の野村ホールディングスと「キャプテン翼」のクラブ・南葛SCが共に描く未来「地域社会の発展とグローバル展開への挑戦」

posted2025/12/25 10:30

 
創立100周年の野村ホールディングスと「キャプテン翼」のクラブ・南葛SCが共に描く未来「地域社会の発展とグローバル展開への挑戦」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

2025年シーズンはわずか勝ち点1の差で関東サッカーリーグ1部の優勝を逃したが、来季こそJFLへの昇格を目指す

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Kiichi Matsumoto

1925年12月25日に創業した野村グループは節目の100周年を迎えるにあたり、2024年、東京・葛飾区がホームタウンの南葛SCとパートナー契約を締結。グローバル展開も見据えた夢膨らむビジョンを両社のトップが語り合う。

「キャプテン翼」のように、世界へ――。

 創立100周年を迎えた野村ホールディングス(以下、野村HD)は「キャプテン翼」の作者、高橋陽一がオーナーを務める南葛SC(関東サッカーリーグ1部)と2024年シーズンからパートナー契約を結んでいる。東京・葛飾区に根差し、地域から世界に打って出ようとするクラブの姿勢は、「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」というパーパスを実践する野村HDの理念とも合致する。長らく次世代支援に取り組んできた同社は、今回新たにスポーツと金融を融合させた試みを実施した。

 野村HDの奥田健太郎グループCEO、南葛SCの高橋オーナー、岡野雅行事業本部長、岩本義弘GMが“未来への挑戦”を語り合った。

奥田 野村HDは創立100周年を迎えました。南葛SCの夢ある挑戦をご一緒できることを嬉しく思います。

高橋 アカデミー(U-18、U-15)のユニフォーム胸部分へのロゴ掲出をはじめ、いろいろとサポートしていただき改めて感謝申し上げます。子供のうちから金融や経済の知識を身につける大切さを広めていきたいという話も伺っていたので、我々としてもぜひやっていきたいと思いました。

岩本 (野村證券小岩支店、野村HDのファイナンシャル・ウェルビーイング部と連携して)9月6日に「サッカー教室×お金の教室」という小学生向けイベントを開催しました。金融経済教育のみですとまだ馴染みのない子も多く、子供たちを集めるのはちょっとハードルが高くなるのかもしれません。でもサッカー教室をセットにして、経済の仕組みのクイズや為替変動の疑似体験などを通して楽しく学ぶことができたと思います。保護者の方にも大好評でしたし、「キャプテン翼」も組み合わせながら全国に広げていけるのではないかなという手応えがありました。

奥田 当社では、小・中学生から大人まで幅広い世代を対象に、1990年代後半以降25年以上にわたり金融経済教育に取り組み、受講者数は累計110万人を超えています。今回、サッカーを入り口として実施する機会を設けたことで、金融に初めて触れる子も含めて、楽しみながら学べる場を提供できました。今回のイベント実施を通して当社としても改めて南葛SCの地域での盛り上がりも感じることができました。

岡野 今、葛飾の盛り上がりは本当に凄いですよ。(2025年に)事業本部長に就任してから、どこに行っても「今日も勝ちましょう」とか「岡野さん、頑張ってよ!」と常に声を掛けてもらいます。僕、南葛SCのYouTubeチャンネルで、岩本と一緒に立石、新小岩、金町と酒場をずっと回っているんですけど、電車に乗っていたら隣の人から“三度見”されたんですね。そうしたら「今ちょうど岡野さんの番組観ています」と言われまして(笑)。

奥田 嬉しい反応ですね。南葛SCは地域に貢献されています。当社は全国の各地に展開しているため、どのように金融サービスをお届けするか、地域の発展に貢献できるかを社員一人ひとりが考えています。次の100年に向け、豊かな社会を実現していきたい。この点においても南葛SCの地域への貢献と重なります。

岡野 僕の役割は、地域のみなさんとたくさん絡んでいくことだと考えています。仕事が終わったら、ホームタウンの店で食事をして帰るのですが、「南葛SCをどうやって応援していけばいいですか」とか気にしてくれる方が、どんどん増えてきているんです。ここに来て最初の仕事が「青鬼」になって豆を撒かれることだったのですが、サウナの熱波師をやったり、お祭りに参加したり、いろいろやらせてもらっているのもこのクラブをもっと身近に感じてほしいからでして。

奥田 地域社会への長期的な貢献はグローバルに信頼される企業の重要な要素。南葛SCのような地域での取り組みを通じて得られる信頼やノウハウは、当社がグローバルにビジネスを推進するための強い基盤になります。また、グローバルでの私たちの経験を活かすことで、地域社会に対して貢献できることもあるはずです。

岩本 高橋先生自身、生まれ育ったこの地域に、スポーツの力で熱狂を生み出したいとの思いからスタートしています。(サッカー教室の)翼DREAM、商店街との協働活動などJリーグのクラブ以上に地域密着を意識してやってきた成果として、ホームゲームでの注目試合はほぼ満員。これまでの最多動員数を更新する形でシーズンを終えました。パートナー企業さんも390社を超えていて、その8割が葛飾を中心とした下町エリアに存在します。

高橋 僕が子供の頃は、縁日があるとどこの地域も凄くにぎわっていました。そういうものが段々なくなってきた中で、ホームスタジアムの奥戸総合スポーツセンター陸上競技場で試合になればいろんな店が出て、地域の人も、そして何より子供たちが楽しそうにしてくれています。地元の葛飾から段々と熱気を生み出せていることを嬉しく思います。

岡野 それもこれもやっぱり「キャプテン翼」の影響力が大きいですよ。

奥田 高橋先生が立ち上げた南葛SCは作品の世界観を現実の地域活動に落とし込み、スポーツや漫画、アニメの持つ力で、子供たちや地域の人たちを笑顔にしていることがやはり大きな魅力だと思います。

高橋 サッカーが盛んな国や地域の多くでアニメが放送されていて、再放送の回数も凄く多い。日本だと3世代でファンだと言ってもらえることもあります。

岩本 南葛SCの風間八宏監督がまさにそうですよね。宏希選手、宏矢選手のお子さんたちも「キャプテン翼」を観ているそうです。海外でも(キリアン・)エムバペ選手はじめ世界中の選手が作品を観て育っていて、例えば(アレハンドロ・)ガルナチョ選手も熱烈なファンだと聞いていますし、その影響力は本当に凄まじいです。

岡野 僕なんてもうバリバリの世代ですよ。小3のときに「週刊少年ジャンプ」で連載が始まって、オーバーヘッドキックなんて砂場で何度も練習していました。日向小次郎が大好きで、真似して練習着の袖をまくっていましたから。もう影響力しかなかったですね。でもこのクラブにやって来て、原作では静岡が舞台でしたけど、葛飾だから南葛なんだとようやく知って(笑)。「キャプテン翼」の銅像が立っている学校もあるくらい、本当に作品が根付いている地域だと実感しています。

岩本 先日、高橋先生とサウジアラビアを訪れた際、企業のトップの人たちがとうとうと“「キャプテン翼」愛”を語ってくるんですよ。この作品は、人間教育を含めて大切なすべてが詰まっている、と。サッカーが好きなサウジアラビアの子供たちがきちんとした大人になっているのは、「キャプテン翼」のおかげ、とまで言ってくれました。

奥田 私たちは世界中でビジネスを行なっています。「キャプテン翼」の世界的な人気はグローバルでのパートナーシップの活用としても期待しています。

高橋 「キャプテン翼」と、実際の南葛SCによるコラボによって、これからまだまだいろんな展開があると思っています。

奥田 日本が世界に誇るコンテンツの一つであることは言うまでもありません。世界にこれほどまでに広がっているのは素晴らしいことであり、グローバルに事業展開する当社としても見習うべき点が非常に多いと言えます。

岩本 新小岩駅から徒歩5分のところにサッカー専用スタジアムと「キャプテン翼ミュージアム」を設立する計画を葛飾区が進めている最中です。スタジアムは、クラブの家みたいなものです。素晴らしいスタジアムをつくることによって、より地域の人たちを巻き込んでいくことが可能になります。「キャプテン翼」のクラブですから、Jリーグに参入できた暁にはそれこそ世界から注目を集めるようになるという期待を抱いています。

高橋 スタジアム自体がサッカークラブの価値にもなる。夢を持って進めば進むほど、もっとその価値が上がっていくんじゃないかなっていう思いがあります。

岡野 本当にそうですね。「キャプテン翼」の力もあって、世界中にいる子供たちにこの南葛SCでプレーしたいって言ってもらえるような未来が待っているんじゃないかなって思います。

岩本 その意味でも100周年を迎えた野村HDさんとパートナーシップを組めたことは、大きな意義があると改めて思っています。営業に回ると「えっ、野村HDさんがパートナーなんですか」と今でも驚かれます。100年間挑戦を続け、グローバルにビジネスを展開する野村HDさん。そこに恥じないクラブにならなければなりません。そして地域からグローバルのところまで、一緒に歩んでいけたら嬉しいです。

奥田 我々としましてはこれからの100年もあらゆるステークホルダーの皆さまと共に新たな価値を共創していきます。南葛SCとの連携は地元の子供たちや地域コミュニティへの貢献を通じて、当社のパーパスにもつながると確信しています。

高橋 南葛SCはグローバルに展開できるポテンシャルを持ったクラブだと感じています。Jリーグ参入のために這い上がっていかなければなりませんが、パートナーや地域、ファン、サポーターのみなさんとその過程を楽しみながら実感しながら歩んでいきたいと思っています。これからが楽しみでなりません。

奥田 当社は、地域とグローバルの双方で発展を目指す南葛SCと共に、新たな挑戦を続け、次世代や地域の可能性が広がる未来を、皆さまと共に創造していきたいと思います。

野村グループ100周年記念サイトでは会社の歴史や歴史動画シリーズ、周年事業に関する情報を順次公開中

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