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「シード権獲得を目指して」山梨学院大学をサポートする世界一有名な応援団
posted2025/12/25 11:00
壮行会には激励品の贈呈にハローキティが登場。選手たちにエールを送った
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福田剛Tsuyoshi Fukuda
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©2025 SANRIO CO.,LTD.
12月12日、山梨県甲府市。八ヶ岳おろしと呼ばれる甲府盆地特有の北風が吹くなか山梨学院大学のキャンパスでは、年明けの駅伝大会に向け、選手を激励する壮行会が行われた。チームジャージを身に纏った弓削征慶主将が「シード権獲得を目指して、チーム一丸となって走り切ります」と宣言すると、ハローキティが激励品の贈呈に登場。弓削主将に応援タオルを手渡すと、その愛らしい姿に会場に集まった学生や教職員の顔に笑みが広がった。
サンリオは、今年10月から山梨学院大学陸上競技部とスポンサー契約を締結。同月に行われた箱根駅伝予選会で、選手たちはハローキティをあしらったコーポレートロゴが入った新ユニフォームで出場した。
「友達からはハローキティがついてくれていいなと羨ましがられました」と、レースを走った平八重充希副主将は感想を語った。
陸上競技とはこれまで縁のなかったサンリオが、どうして山梨学院大学をサポートすることになったのだろうか。
サンリオ経営戦略本部の鶴谷哲司氏は、その背景をこう説明する。
「サンリオには『みんななかよく』という企業理念があり『One World, Connecting Smiles.』を実現するためにさまざまな取り組みを進めています。一本の襷に想いを込め、人と人が繋がっていくスポーツである駅伝は、まさにサンリオが目指す方向と一致しています。そこでサンリオとして何か駅伝に協力できることはないかと考えていました」
数ある駅伝チームのなかから山梨学院大学を選んだのは、「学生の皆さんへの恩返しという意味も込められている」と、鶴谷氏は続ける。
「サンリオのキャラクター達は多くの学生の皆さんに応援いただいております。その感謝の気持ちに加え、学生の皆さんに少しでも笑顔が溢れるように還元していきたいという想いもあります。しかも、山梨学院大学のキャンパスがある山梨県甲府市はサンリオの創業者である辻信太郎名誉会長の出身地であります。山梨から世界に羽ばたいたハローキティのように、将来的には世界で活躍する選手を輩出することに貢献できればと考え、山梨学院大学陸上競技部さんへのサポートを決めました」
襷と共にハローキティが選手の想いを繋いでいく
サンリオとのスポンサー契約は「想像以上の反響があった」と、大﨑悟史監督はその影響力の大きさに驚く。
「どこに行っても、まずはサンリオさんの話題から始まるくらい(笑)、皆さんに注目されるようになりました。これまで大学駅伝にあまり興味のなかった人が、サンリオさんのサポートをきっかけに大学駅伝に興味を持つようになり、応援してくれる人が増えるのは本当に嬉しいです。選手たちには皆さんの期待をプレッシャーに感じることもあるかもしれませんが、ハローキティは世界中に笑顔を届ける存在ですから、辛い時も笑顔で走ってもらいたいという話を常にしています。その方がきっと良い結果に繋がるはずです」
ハローキティは新たなファンの獲得だけではなく、チームの雰囲気作りにも一役買っている。大﨑監督は続ける。
「練習中はみんな集中しているので、ピリッとした雰囲気になることがあります。私としては肩の力を抜いた方がいい練習ができると思っているので、ハローキティのぬいぐるみを監督イスに座らせて、選手たちを見守ってもらっています。ハローキティの存在が選手の気持ちを和らげ、チームの雰囲気が良くなっています」
4年生の弓削主将、平八重副主将にとっては次が学生生活最後の大会となる。
「前回の大会が終わってから、箱根駅伝シード権獲得を目標に頑張ってきました。ここ数年、シード権争いに絡めていませんが、自分たちの駅伝ができれば、必ず目標を達成できると信じています。これまでは注目度が低いチームだったのですが、サンリオさんのサポートもあって、たくさんの声援をいただくようになりました。皆さんの期待を力に変えて、自分たちの持っている力を100%出し切った走りを見せたいです」(弓削主将)
「個人としては前回の自分を超えたいです。チームとしては、観ている人に今回の山梨学院は違うぞと感じてもらえるような、皆さんを楽しませる走りができたらと思っています」(平八重副主将)
2人の発言を温かく見守っていた大﨑監督は大会に向けての想いをこう語る。
「昨年度よりも確実に力はついています。私よりも選手たちの方がシード権を獲得したいという想いが強いので、結果を残させてあげたいという想いはあります。ただ、私としては結果はどうあれ、選手たちが存分に力を発揮してレース後にすべてを出し切った、充実した表情を見せてくれれば何も言うことはありません」
チームをサポートする鶴谷氏も、今回のレースに大きな期待を寄せる。
「チームのために一生懸命に走る姿は見ている人に感動や笑顔を与えてくれるはずです。その想いがサンリオの企業理念である『みんななかよく』や、よりよい社会に繋がることを期待しています」
10人の選手ひとりひとりが約1時間を走る長丁場のレース。今回は襷と共にハローキティが選手の想いを繋いでいく。





