今回の連戦で初代表となった伊藤は、中長距離のフィードを得意とする。ビルドアップはもちろん、カウンターの起点となるパスを供給できる選手だ。

　所属するシュツットガルトは3バックを採用しており、4バックの左サイドバックとしては経験値が足りない。ディフェンス面に改善の余地はあり、時間も限られているが、その左足はカウンターの局面で武器になる。

　カウンターから相手ゴールへ迫ることができれば、相手の守り方が変わる。背後を取られることを嫌う守備側が、最終ラインを少し後方へ設定するのは想定内だ。それによって、中盤にスペースが生まれる。守備側がライン間をコンパクトに保ってきても、ボールは保持しやすくなる。リスクマネジメントを大前提としつつも、自分たちでボールを動かしながら攻撃の糸口を探していける。

デザインされたリスタートを用意できるか

　リスタートの練度も高めたい。アジア最終予選でも、今回の4試合でも、CKやFKが相手の脅威となっていないのだ。

　中村俊輔や遠藤保仁、本田圭佑のようなキッカーが、現在のチームにはいない。それにしても、率直に言って得点の気配が薄い。FKやCKは、練習によってパターンを手にできる。デザインされたものを用意したい。

　リスタートからも相手ゴールを脅かせば、カウンターの局面でも相手に精神的な圧力を加えられる。相手DFに「反則で止めてリスタートを与えるのは危険だ」と思わせることができたら、日本のFW陣のスピードが生きる。

　W杯まで5カ月となったチームの現在地は、ベスト8入りの目標とかけ離れている。ただ、世界の勢力分布において、ベスト8入りを「実現可能」と捉えられる国がごくわずかなのも事実だ。

　挑戦する者にのみ、未来は開ける。

　限られた時間のなかでも、できること、やらなければいけないことはある。

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