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「勝ち点4が日本の限界」トルシエがW杯ベスト16に進む確率を「50%」と計算する理由「彼らはドイツにコンプレックスを抱いてない」
posted2022/04/22 17:04
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Kenji Tanaka/JMPA
フィリップ・トルシエインタビューの第2回である。
日本にとってのドイツとスペインの違い、ドイツ、ニュージーランドまたはコスタリカ、スペインという日程のアドバンテージ……。
思い起こせば日本サッカーの進歩は、ドイツのサポートなしにはありえなかった。1964年の東京五輪に向けて、日本協会の要請を受けたゼップ・ヘルベルガー(54年スイスW杯優勝監督)が愛弟子のデットマール・クラマーを派遣したときから日本に新たな時代が到来し、メキシコ五輪銅メダルと日本リーグの繁栄(時期は短かったが)へと続いていくのだった。その後もドイツとの交流は続き、ヨーロッパ5大リーグのなかで日本人選手を最も積極的に受け入れたのはドイツであり、その状況はこれだけ多くの日本人がヨーロッパでプレーするようになった今も変わってはいない。
そのドイツとW杯の舞台で戦う。グループリーグを突破するために勝ち点を求めて。可能性はごく僅かだが、具体的でもある。それがサッカーであるとトルシエは語っている。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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――ドイツは初戦に照準を合わせているわけではないところに、日本の反撃の余地があるわけですね。
「初戦はいつも難しい。私が覚えているのは2006年ドイツW杯初戦でフランスがスイスと対戦したときのことだ。結果は無得点の引き分けだった(フランスは続く韓国戦も1対1引き分け、最終のトーゴ戦に勝利してようやくグループリーグ突破を決めた。調子が上向くのはラウンド16以降だった)。ロシアW杯初戦のオーストラリア戦も、決勝ゴールが決まったのは終了10分前だった。
初戦が簡単でないのは、まずチームがフレッシュであるからだ。モチベーションも高い。ドイツにとって厄介なのは、初戦で日本と当たるのは悪くはないと誰もが思っていることだ。容易に勝てる試合で、勝利は彼らのノルマでもある。そこにプレッシャーが生まれる。期待されるのは勝利のみだ。重圧がかかるし、高いモチベーションで臨みボールを支配しなければならないが、相対するのはプレーを構築できる日本だ。しっかりと守れるだけでなく、危険なカウンターアタックも繰り出すことが出来るチームだ。
ドイツ戦における日本のアドバンテージ
日本はドイツを困惑させることのできる論拠をたくさん持っている。多くの選手がドイツでプレーしているのは大きなアドバンテージだ。ドイツ人がどうプレーしてどんな反応をするかを彼らはよく知っている。試合は拮抗する可能性がある。
日程は日本に有利だ。厳しいグループであることに変わりはないが、初戦がドイツで第2戦がコスタリカかニュージーランドであるのは、日本にとってはもの凄く望ましい。つけ込む余地も希望もあるし、このグループで戦えるのが大きなモチベーションになる。日本がドイツを相手に素晴らしい試合をしようとするのは間違いない」