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「将棋の才能がないとは…藤井聡太さんや羽生善治先生と比べてなんです」永瀬拓矢がホンネで語った「藤井さんを上回る」ための試行錯誤

posted2025/06/22 11:03

 
「将棋の才能がないとは…藤井聡太さんや羽生善治先生と比べてなんです」永瀬拓矢がホンネで語った「藤井さんを上回る」ための試行錯誤<Number Web> photograph by Shintaro Okawa

永瀬拓矢は王将戦、名人戦に続き王位戦で絶対王者・藤井聡太に挑むことになる

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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Shintaro Okawa

藤井聡太七冠(22歳)に挑み続けるためのモチベーション、その根源とは。絶対王者に挑んだ永瀬拓矢九段(32歳)が名人戦を終え、来たる王位戦に向けて語りつくす。〈NumberWebノンフィクション。初出以外は棋士の段位・称号は省略/全4回。第1回からつづく〉

藤井さんや羽生先生と比べて、才能は…

 午後11時を過ぎた将棋会館の休憩室で、永瀬と私は向き合っていた。自動販売機が、時折ぶうんという鈍い音を発する。

 藤井が対永瀬戦では新機軸を出してくることが多く、定跡面で後れを取っていることがはっきりしたという永瀬。7月の王位戦開幕までにどう修正するのか。

「名人戦と王座戦を負けてしまったので、時間ができました。王位戦第1局までは、順位戦しか対局がないかもしれません(6月20日、対中村太地八段)。だから今まで以上にパソコンに向かって、定跡を準備しようと思います。全体の実力をつけるのが重要だという気持ちに変わりはありませんが、相手が定跡を入れすぎているので、さすがに私も対抗しないと勝負になりません(笑)。あ、これはあくまで対藤井戦に限る話で、他の棋士との対戦ではそこまで定跡にこだわっていません」

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 今更だが、永瀬にとって藤井はあまりに特別な存在なのだ。以前にこんな話をしていたのを思い出す。

「私がよく、『自分は将棋の才能がない』という話をするじゃないですか。そうすると、本当に私に将棋の才能がないと思われる方がいるようなんです。違うんですよ。藤井さんや羽生先生(善治九段)と比較して才能がない、ということなんです」

藤井さんが私の上位互換になりやすい…それだとまずい

 それから『BLEACH』というマンガに例えて説明を始めた。

「最強のラスボスがいて、主人公とその父親がいます。主人公がラスボスに対して、『こんなに強いのか、こんなに大きいのか』と言うシーンがあるんです。でも父親は、ラスボスの強さも大きさも理解できない」

 ラスボスは藤井であり、主人公は永瀬ということだろうか。永瀬が生涯で一番多く指している相手は藤井で、現在は2日制でより濃く接している。日々、藤井への理解は深まっているのだろう。

【次ページ】 自分の理想は藤井さんを上回ることです

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