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名人・藤井聡太3連覇、記者が見た舞台裏「永瀬(拓矢)さんキレキレですね」「逆転だ」感想戦終了は0時35分…翌朝「大変なシリーズだった」
posted2025/06/22 11:01

名人戦3連覇を果たした藤井聡太七冠。永瀬拓矢九段の正着続きだった第5局指し直し局で、逆転劇を完遂した
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大川慎太郎Shintaro Okawa
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JIJI PRESS
名人戦第5局、古河の熱気と勝負めし
名人戦第5局で千日手が成立したのは、2日目の午前10時59分。指し直し局は午前11時半からに決まった。外部メディアの取材の受付は午後3時からだったが、指し直せば終局はさらに遅くなる。もう少し局面が動いてから向かっても問題はないだろう。
名人戦第5局の対局地は茨城県古河市。例えば東京・将棋会館からは、新宿に出て「湘南新宿ライン」に乗り、1時間ほどで着く。新宿から乗り換えなしで行けるのでアクセスはいい。途中で、埼玉県の大宮駅を通過した。古河は茨城県だが、茨城の県庁所在地である水戸市よりも、埼玉の県庁所在地や栃木県の県庁所在地の宇都宮市に近いことに気づいた。
茨城県で名人戦が開催されるのは今回が初めてということで、地元の歓迎ぶりは熱烈だった。特に「古河の勝負めし」のメニューブックは充実しており、食事が16種類、スイーツが16種類、ドリンクが8種類も用意されていた。どれも魅力的に映る。初めてと言えば、両対局者とも茨城県を訪れるのは今回が初だと前夜祭で口を揃えて挨拶をした。
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取材陣の待機場所は、大盤解説会が行われている「山水はなももプラザ」。前夜祭も行われた場所だ。受付を済ませて入ると、顔なじみの先輩記者に「永瀬さん、好調ですねえ」と声をかけられた。
永瀬が手応え「3三金型」作戦の源流を語る
すでに指し直し局は佳境に入り、後手の永瀬は奮闘していた。先手の藤井が角換わりに誘導すると、永瀬は自分からは角交換をせずに角を3三に上がった。先手に角交換を促して当面3三金型で戦う作戦を採ったのだ。後手番だった第2局でも採用しており、手応えを感じたのだろう。
「後手の主張は8四歩型です(左桂を8五に跳ねる余地がある)。それなら一手損角換わりでも同じかもしれませんが、3三金型の瞬間はこちらが手得できています。もちろん△3二金と引かされる展開もありますが、その場合は本譜のように銀冠にすることが主張です」
と永瀬は語った。