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「勝ち点4が日本の限界」トルシエがW杯ベスト16に進む確率を「50%」と計算する理由「彼らはドイツにコンプレックスを抱いてない」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKenji Tanaka/JMPA
posted2022/04/22 17:04
最終予選を2位で勝ち上がった日本代表。カタールW杯では優勝候補のドイツとスペインがいるグループを戦う
――初戦はスペインよりもドイツが望ましいということですね。
「間違いない。ドイツ対ドイツになるからだ。フランス対セネガルと似たような状況だ。鍵は日本の選手がドイツでプレーしていることだ。彼らはドイツにコンプレックスを抱いてはいない。
ところがスペインは――スペインにも日本人は何人か行っているが、ドイツほど多くはない。ドイツに対するのとは同じ気持ちにはなれないし、より強い衝撃を受けかねない。というのもスペインはボールを保持するチームであるからだ。ポゼッションに関してドイツより優れており、ボールをキープするスペインに日本は苦しめられる可能性がある。ドイツのプレー哲学はスペインとは違う。ドイツの方が日本は適応しやすい。スペインよりフィジカルが強くダイレクトだが予測はしやすい。ドイツの方がスペインよりずっとやりやすいはずだ」
――もうひとつ思い出すのは、今回の最終予選の初戦となったオマーン戦です。オマーンは日本に対して万全の準備で臨み素晴らしいパフォーマンスで日本を破りましたが、その後の試合はごく平凡で日本戦のようなことは2度とありませんでした。
「その通りで例は限りなくある。02年日韓W杯のベルギー戦もそうだった。ベルギーはヨーロッパのサッカー大国だが、日本を破るのは難しかった。初戦はいつも簡単ではないし拮抗する」
ゼロの可能性を高める要素
――さきほど理屈の上では日本はノーチャンスとあなたは言いましたが、それでもほんの少しの可能性はあるということですか?
「論理的に考えれば日本の可能性はゼロだ。しかしさまざまな要因が両者の差を縮める。初戦には両者の差を僅かなものにするあらゆる要素が揃っている。理屈ではドイツの方が圧倒的に強いが、現実にはこれが初戦であること、ドイツは優勝候補であり結果に対して大きな重圧がかかっていること、対して日本はプレッシャーがまったくなく選手たちはドイツをよく知っていることなどを考慮すれば、初戦に臨む両者の心理状態はイーブンであるといえる。日本にとってはアドバンテージで、スペインが相手だとこうはいかない。
逆にスペインが初戦だと、ドイツ戦が最後になる。最終戦でのドイツとの対戦はまったく異なる戦いになる。どちらにとっても決勝戦(註:雌雄を決する試合の意味)となるからだ。戦いを継続するために結果が必要で、ドイツのモチベーションはより高まっているだろう。繰り返すが日本にとっては死のグループで、可能性があるとすればそれはドイツから勝ち点1を奪うことだ。そしてニュージーランドまたはコスタリカから勝ち点3を得る。つまり日本は少なくとも勝ち点4を獲得せねばならない。