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「6月は選手を休ませるべき」「久保や三笘、中山にはプレーの機会が必要」トルシエが森保監督にアドバイスするW杯までの“理想的な準備”とは
posted2022/04/22 17:05
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Koki Nagahama/JMPA
フィリップ・トルシエインタビューの最終回である。
日本が真の目的(W杯ベスト8以上)を達成するには、日本協会と日本サッカー界はこれから何をすればいいのか。その答えを、誰もが薄々感じていながら明確に表明していない。ならば答えはどこにあるのか。
さらにトルシエは、カタールでの大会そのものにも言及する。彼の言葉に注目して欲しい。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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――それではW杯に向けてどう準備を進めればいいでしょうか。本大会までにおよそ10試合が予定されています(6月のキリンカップ、キリンチャレンジ各2試合、7月のEAFF E1選手権=東アジア選手権の3試合、9月の国際マッチデーウィークでの2試合)。
6月は休養の時期だ
「思うに6月のキリンカップとキリンチャレンジはほぼ意味がない。キリンカップはW杯の準備のための大会ではない。
日本代表のほとんどすべての選手がヨーロッパでプレーしている。6月は彼らにとって休養の時期だ。W杯は7月に開催されるわけではない。大会がおこなわれるのは11~12月だ。ヨーロッパでプレーする選手にとって6月はシーズンオフで、日本人選手にもバカンスが必要だ。じっくりと休養を取り、その後に始まる新シーズンに備える。7月にはほとんどの国で新しいシーズンが開幕する。その前の時期に休養を取らなければ疲労は蓄積したままで、11月のW杯に重大な影響を及ぼす。
私が考える最善の準備は、6月の試合を準備とは完全に切り離すことだ。何の役にも立たないのだから。選手は疲れているうえにW杯までまだ6カ月近くある。選手を休ませるべきで、キリンカップはタイミングが悪すぎる。他の時期――9月か10月ならば悪くはないが6月は日程的に最悪だ。何かの役に立つとすれば、それはバックアップメンバーにプレーの機会を与えることだけだ。23歳以下の選手や、代表に入っていてもプレーの機会に恵まれなかった選手たちにとってキリンカップは有益だ。日本代表のグループはさほど大きくはない。ベストチームを構成するグループは多く見積もっても14~16人だ。この16人の多くはドイツでプレーしている。あるいはイングランドやイタリア、フランス、ベルギー、オランダといったヨーロッパのクラブの選手たちだ。彼らにとって6月は休息の時期だ」