ただ、主力と見なされる選手の欠場は、違う選手が出場機会を得ることにもなります。今回のようなスクランブル状態で、いきなり抜擢された選手が結果を残し、飛躍のきっかけをつかむ瞬間をたくさん見てきました。ましてや、この戦いでW杯の出場が決まるかもしれないという、シビれるような舞台です。「決めればヒーロー」というFW特有のメンタルや発想においては、これ以上ないシチュエーションかもしれません。

　誰がスタメンに選ばれるとしても、FW陣にとって大きなチャンスであることには違いありません。どの選手も自分のスタイルをチームに還元し、全力で戦ってほしいと思います。

若きGK谷晃生の招集に感じた森保監督の「意図」

　招集されたメンバーを見ると、今回はGKが4人選ばれています。森保監督は川島永嗣とシュミット・ダニエルの合流が直前になることから、練習での負荷を考慮して国内組の権田修一と谷晃生を選んだ、といった趣旨の説明をしています。

　川島は3月20日に39歳になりました。権田は33歳で、シュミットは30歳です。21歳の谷は最終予選にほぼ帯同していて、戦力として計算されている選手ですが、GKのなかでは飛び抜けて若い。そう考えると、これからの日本代表のゴールを背負っていくに違いない谷の招集には、オーストラリアとのアウェイゲームというしびれる空気感を、肌で感じてもらいたいという意図があるのかもしれません。

昨シーズンのJリーグでは守護神として湘南ベルマーレをJ1残留に導いた谷晃生　©JMPA

　代表チームの経験をつないでいくためにも、「あのときはこうだった」という話ができる選手の存在はとても大事になります。東京五輪のチームに、パリ五輪世代のGK鈴木彩艶を招集したケースと似ているかもしれません。

　DF陣には冨安健洋の名前がありません。キャプテンの吉田麻也が復帰したものの、冨安は前の2試合に続いてケガで合流できませんでした。

　冨安が万全の状態で呼ばれることが、日本代表にとって非常に大きなポイントであることは、誰もが分かっていることでしょう。ただ、彼の不在による影響を前2試合ほど不安視しなくてもいいのかなと、個人的には考えています。

　それは、吉田と冨安が不在であっても、谷口彰悟と板倉滉が2試合連続のクリーンシートに貢献したからです。国内での2連戦ではありましたが、CBのコンビを組むのは初めてという状況で、内容の伴った結果を残してくれました。自分たちもこの舞台でやれるんだ、というパフォーマンスを見せてくれたと思います。

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