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元日本代表・中村憲剛は“2試合連続交代残し”をどう見る?「決断しにくい場面」「タイミングがあったとすれば…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/09/10 17:00
中国に1-0で勝利した日本代表。元日本代表の中村憲剛氏が徹底解説する
右サイドバックの室屋成も、チームの推進力を下支えしていました。ボールを受けても受けられなくてもオーバーラップする献身性とスピード感を持って、アグレッシブに右サイドで上下動を繰り返していました。彼のスピード感と迫力は、中国への圧力になっていたと思います。
先発で起用された冨安、室屋、古橋亨梧に加えて、久保も森保一監督の期待に応えました。
タフな環境で光った20歳久保の才能「そう簡単ではない」
最終予選の初戦に敗れて迎えた、とてもとても大事な2戦目、しかもアウェイというタフな環境下で、トップ下を託された20歳の選手が、90分にわたってほとんど大きなミスもなくプレーしたのです。そればかりか、チームを牽引する働きを見せていました。久保なら当たり前と言う人がいるかもしれませんが、そう簡単ではありません。彼の頭脳とそれに基づくプレーは、チームに勢いをもたらしてくれました。
この日の久保は主にトップ下からやや右寄りのエリアで、うまくポイントを作っていました。相手が「5」と「3」のブロックでバイタルエリアを埋める陣形を見て「ここが空いているな」と察知し、瞬間的にどの相手にもつかまらない立ち位置をとり、1トップの大迫やボランチ、サイドバックと関わったり、右サイドで伊東と入れ替わったり、左サイドへいったりと、自らがいく先々で数的優位を作り、攻撃陣をうまく循環させていたのです。東京五輪ではやや持ち過ぎてしまうところがありましたが、この日は得点こそなかったものの判断が早く球離れが良く、プレーがとても整理されていて相手の脅威になっていた印象です。自クラブで継続的に試合に出ていることで、身体のキレもありました。
先発に指名された選手が自分のことだけではなく、チームのために約束事を遂行しながら、自分の個性を出して勝利に貢献する姿勢を見せることで、他のメンバーにもそれが伝播し、競争は活性化していきます。この後も鎌田大地や南野拓実と互いを刺激し合うような関係のなかで、久保はスタメン争いに割って入っていくのではないだろうか。そう思わせる素晴らしいパフォーマンスだったと思います。
オマーン戦と同じ「交代2つ残し」をどう見るか?
森保監督はオマーン戦に続いて、交代枠を「2つ」残しました。怪我人の交代で枠を使わざるを得なかったこともありますし、試合展開も理由にあげられます。この日のような「1対0」の展開はピッチに立っている11人の守備のリズムとバランスが良いだけに、誰かを代えることでそのリズムとバランスが崩れてしまうことは避けたいものです。それゆえに交代を我慢することは、僕も選手として経験があるのでとても理解できます。