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「メキシコ戦の敗退を重く受け止めるべき」中西哲生が分析する“日本が五輪やW杯で勝つために何が必要なのか?”
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/08/07 17:07
6日にメキシコとの3位決定戦に挑んだ日本代表だったが、53年ぶりのメダル獲得はならなかった
三つめはブースターとしての役割です。準決勝から中2日で心身ともに疲弊している選手が多いなかで、ライネスは他の選手に比べて肉体的な消耗が抑えられている。チームの勝利に貢献できていない悔しさを抱えてもいる。決勝進出を逃して喪失感に襲われているチームを引っ張り上げる存在として、ロサーノ監督はライネスを起用したと思うのです。
同じ「FKからヘディングシュート」で失点
日本は13分にPKで先制されてしまいました。試合の入りが先行きに不安を感じさせるものだったうえに、ビハインドを背負ってしまった。次の1点を与えたら厳しくなる展開で、22分にFKからヘディングシュートで失点してしまった。
グループステージでメキシコに喫した失点は、FKからヘディングシュートでした。同じことを繰り返してはいけないと、警戒はしていたはずです。日本の警戒を上回ってきたメキシコを褒めるべきかもしれませんが、直接FKにつながるファウルを与えないことに、もっと注意を払うべきだったと言うこともできるでしょう。
日本の“ブースター役”は誰だったのか?
この時点で私は、「日本にもブースター役を担う選手が欲しい」と考えました。ライネスの存在が刺激になったというよりも、メキシコがしたたかに2点を奪ったという展開ですが、日本に閉塞感が忍び寄っているのは紛れもない事実です。ここはもう思い切って、前半から交代のカードを切ってもいいのでは、と感じました。選手の消耗が激しいだけに、これまでと同じパターンの選手起用では劣勢をはね除けるのは難しいからです。
森保一監督は、後半開始に旗手怜央を起用しました。中山雄太に代わって彼が左サイドバックに入るのは、攻撃的にいくというシグナルです。ある程度はオープンな展開を覚悟したのでしょうが、58分に左CKからまたヘディングシュートで3点目を喫してしまいました。
直後の62分、森保監督は三笘薫と上田綺世を送り込みます。
ここから、試合の流れが一気に変わりました。
三笘が変えました。