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【非難の嵐でプレミア勢が即脱退】参加すれば260~390億円ボーナス 強欲な欧州スーパーリーグ構想は「フットボール界の内戦」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/04/21 11:04
(左から)ユーべのアニェッリ会長、レアルのペレス会長、マンUのグレイザーオーナー。欧州SLの“首謀者”と見られている
元ユナイテッドの人気解説者ギャリー・ネビルは、スカイ・スポーツの番組で以下のように怒りを露わにした。
「本当に腹立たしい。特にマンチェスター・ユナイテッドとリバプールには、嫌気が差す。リバプールは『You'll never walk alone』と歌い、民衆やファンのクラブのふりをしているということなのか。マンチェスター・ユナイテッドは100年以上前に、労働者たちが創り上げたクラブだ。そんなクラブが、競争原理のないスーパーリーグに参戦するのか? 心から恥ずべき行為だ。(彼らの動機は)強欲以外の何ものでもない」
なおリバプールのユルゲン・クロップ監督は「チームや選手たち、そして私は、(この提案に)一切関わりがない。それなのに、人々は私たちに厳しい言葉をぶつけてくる」と回答している。またジェイムズ・ミルナーもリーズ戦後に「その提案は好きになれないし、実現しないことを願う」と言っているように、それはきっと本当で、こちらもアメリカ人のオーナーが独断で決めたことなのだろう。
英国紙は「戦争だ」「ファンに対する刑事事件」
声明の翌朝、英国の朝刊には「これは戦争だ」や「フットボール界の内戦」、「ファンに対する刑事事件」といった見出しが躍った。また国会でも議題に上がり、政府も全力でイングランドのクラブがこの大会に参加することを阻むと誓った。オリバー・ドウデン文化大臣は、「フットボールは私たちの国のDNAだ」から始まる口頭声明で次のように話した。
「フットボールクラブは、ビジネスだけのものではない。国中のコミュニティーを形成するものだ。だからおそらく皆さんと同じように、昨夜にいくつかのクラブが独立したヨーロピアン・リーグを設立するという提案を聞いて、私はゾッとしている。これらの6クラブはこの決定を、協会や政府に一切相談することなく決めた。だが最悪なのは、それぞれのファンともまったく対話することなく、決定を周知したことにある」
これらの反応を受けてか、マンチェスター・シティ、リバプール、アーセナル、トッテナムが公式サイトで離脱への正式な手続きを行ったと発表。「BBC」によるとロマン・アブラモビッチがオーナーを務めるチェルシー、そしてユナイテッドも追随するようだ。
オーナーたちの利益追求と地元軽視に拍車が
近年、ビッグクラブのオーナーたちが、筋金入りのファンや地元サポーターを軽視していることは、日に日に明らかになっている。
特にクラブの地元と縁もゆかりもないビジネスマンたちは、クラブを世界的なブランドとしか見ず、自らの利益やイメージアップばかりを追求してきた。そしてパンデミックが起こり、観客不在でもテレビ放映権料があれば、ビジネスが成り立つことがわかり、それをさらに突き詰めるべく、この決定に至ったのではないだろうか。