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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「CL決勝の痛恨ミスで誹謗中傷・殺害予告された守護神」カリウス28歳のリバプール退団… それでもクロップがずっと信頼した理由
posted2022/06/12 11:01
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph by
Getty Images
スコアレスで迎えた後半、試合はややオープンな展開となり、ゴールが生まれそうな雰囲気を醸し出す。
それでも、それにしても、あまりにもあっけない先制点だった。
51分、トニ・クロースの長くなったパスをリバプールGKがキャッチする。リスタートをしようとデヤン・ロブレンにボールを投げたその瞬間、目の前にいたカリム・ベンゼマが脚を出した。当たって跳ね返ったボールはゴールまで転がり、レアル・マドリーが先制。
17-18シーズン・UEFAチャンピオンズリーグ決勝の舞台、緊張感のある試合の流れで起きた突然のことだった。
その後リバプールが追いつき、マドリーが途中出場のギャレス・ベイルのバイシクル弾でリードして迎えた83分。
右のハーフスペースでボールを持ったベイルが、ゴールから約36.5mほど離れた位置から左足を振り抜く。無回転で不安定な軌道を描きながら、シュートはGKの正面に。これをまさかのキャッチミス。無情にもボールは後方に転がり、終盤に試合を決定づける3点目が入った。
フットボールはひとつのミスが命取りだ。それがCLファイナルという大舞台であれば、ひとりのサッカー人生を大きく変えてしまうほどに――。
クロップからも大きく期待されての加入だったが
2016年5月、リバプールにひとりのゴールキーパーが加入した。
ロリス・カリウス。マインツで公式戦96試合に出場した22歳の若き守護神だ。19歳5カ月という若さでブンデスリーガデビューを果たし、13-14シーズン途中からはトーマス・トゥヘル監督の信頼を勝ち得て定位置を確保した。
そのシーズンに9回、翌季に10回のクリーンシートという結果を残すと、デビュー4年目の15-16シーズンには9回のクリーンシートでリーグ3番目に少ない失点の堅守を築き、マインツの6位フィニッシュに大きく貢献している。
若くして経験と実績のあるゴールキーパー。何よりユルゲン・クロップ監督がブンデスリーガで何度も対戦して、その実力を十分把握しているだけに期待値の大きい獲得であった。
「リバプールのレベルにない」との酷評も
しかしレッズでのキャリアはそう順風満帆とまではいかなかった。
加入1年目の12月、ボーンマス戦で正面へのシュートを取りこぼして相手に拾われ、決勝点を献上。OBジェイミー・キャラガーには「リバプールのレベルにない」と辛辣に批判され、この試合を皮切りに徐々に出場機会が減った。