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<エールの力2019 vol.3>
中澤佑二「相手への大声援も自分の力に」

posted2019/10/28 11:00

 
<エールの力2019 vol.3>中澤佑二「相手への大声援も自分の力に」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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J.LEAGUE

 Jリーグ歴代3位の593試合に出場、日本代表7位となる110キャップを誇る中澤佑二さんは、幾多の激戦をくぐり抜けた歴戦の強者。声援のエネルギーの大きさを、だれよりも熟知している。

 20年間、第一線で戦い続けた中澤さんには、好物といえるゲームがあった。それは怒号が飛び交うようなアウェーゲーム。相手への声援が大きくなるほど、闘志を駆り立ててピッチに向かった。

「アウェーでは、敵の声援が大きくなるほど一瞬の状況判断が遅れたり、変な力みが出たりして難しい状況になる。しかも、敵は勢いに乗って攻め立ててくるので、生半可な気持ちでは飲み込まれてしまう。こういうゲームは、覚悟を決めて臨まないといけない」

 相手への声援が大きくなるほど、センターバックは真価が問われる。というのも声援に背中を押され、勢いに乗って攻め込んでくる敵と真っ向勝負しなければいけないからだ。センターバックが敵の勢いに呑まれれば、チーム全体が劣勢に立たされてしまう。

「アウェーでは敵が大声援の力を借りて強い気持ちで挑んでくるので、迎え撃つぼくらはいつも以上に強さや速さを感じます。よくあるのが敵の素早い寄せに圧倒されて、押し込まれてしまうこと。ボールを持っても、ミスを怖れてセーフティなパス回しになり、気がつけばチームの重心が下がって一方的に攻められてしまう」

「厳しいアウェー戦が好きだった」

 悪い流れを変えようにも、ベンチの指示は届かず、味方の声も聞こえない。だが苦しいときにこそ、百戦錬磨のベテランの経験が生きてくる。

「声が届かなければ、プレーやゼスチャーで意思を伝えるしかない。ですから押し込まれたときは、多少のリスクがあっても勇気を持ってボールを前に持ち出す、もしくはクリアした直後にチーム全体を押し上げるようなゼスチャーをわかりやすく見せる。そうすることで流れを変えようとするわけです」

 大声援を受け止めて攻めてくる敵の勢いを全身で受け止め、勇気を持って押し返す。それが思い通りにできると、その先に心地いい勝利の瞬間が待っている。

「それまで騒いでいた敵地の大観衆が押し黙る。これほど気持ちいいことはないですよ。だからぼくは、厳しいアウェー戦が好きだったんです」

 そういって中澤さんは、思い出深いアウェーの勝利の記憶を語り出した。

【次ページ】 ピッチに届いた横浜サポーターの声。

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