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世界選手権、ボルダリング&リード編。
日本勢が見せた「実力」と確かな「成長」。

posted2019/08/22 11:00

 
世界選手権、ボルダリング&リード編。日本勢が見せた「実力」と確かな「成長」。<Number Web> photograph by AFLO

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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 本当の勝負は大会最終盤に控えていると頭では理解しながらも、アスリートとしての本能が目の前の勝負へと突き動かしていく――。

 8月11日に開幕し、11日間におよんだIFSCクライミング世界選手権。会期終盤に実施されたコンバインドは、東京五輪への出場権がかかっていたことでテレビで生中継もされて高い注目を集めた。

 この大会のコンバインド予選に出場するには、単種目すべてに出場し、各種目順位を乗算して出すポイントが低い方から上位20人にならなくてはならない。2020を目指す選手たちはコンバインドに照準を合わせながらも、会期前半に行われる単種目でも高順位を手にしなければ、コンバインド予選にさえ進めない憂き目に合う難しい大会になった。

 一方でコンバインドを見据えれば、単種目は決勝に進出を決めた時点で一桁順位が手に入る。長丁場の戦いを乗り切るには、力を次の種目へと温存する戦略も取れたが、選手たちは単種目でもタイトル獲得を目指して、最後の一瞬まで死力を出し尽くしていた。

ただひとり2完登で優勝の楢﨑智亜。

 大会3日目。ボルダリング決勝は男女ともに今季のW杯ボルダリング・シリーズ年間王者が、一発勝負の今大会でも実力をいかんなく発揮した。男子を制した楢﨑智亜は2大会ぶり2度目、女子のヤーニャ・ガンブレットは2大会連続で表彰台の真ん中で笑みをこぼした。

 楢﨑は大会直前に「スポーツは流れが重要。大会前半の単種目でいい成績を残して、いい流れでコンバインドに進むことができれば」と抱負を語っていたが、その言葉通りの展開に持ち込んだ。ボルダリングの決勝4課題が、楢﨑の得意な動きを求める内容だった幸運にも恵まれて、ほかの5選手が0完登に終わるなか、ただひとり2完登して優勝を決めた。

「自分でも優勝できる力があると思っているなかでの優勝はうれしい」

 W杯シーズンで頭角を現した勢いのまま頂点に立った2016年大会の優勝との違いを、楢﨑はそう語りながらも、「今回は複合(コンバインド)がメインの大会で、単種目の優勝はまだそこまで喜べない」と、2020を見据える視線にブレはなかった。

 ほかの日本勢では藤井快、土肥圭太が決勝に進んでそれぞれ4位と5位。女子は野口啓代が前回大会に続いて2位。野中生萌は5位に入り、倉菜々子が6位になった。決勝後に取材エリアに現れた選手たちは、優勝を逃した悔しさを滲ませながらも、コンバインドに向けての充足感や安堵感を口にしたが、土肥圭太の言葉は競技に臨んだすべての選手たちの気持ちを表していた。

「競技中は先のことなんて考える余裕はなくて。もう指皮はほとんどないも同然ですよ。だけど、目の前に課題があったら、やっぱり全力でいっちゃいますよね」

【次ページ】 森秋彩は「悔しさ70%」の銅メダル。

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