才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
人と会うことでさらに幅が広がる、山田章仁のラグビー人生。
posted2018/08/07 16:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Shiro Miyake
持ち前の俊足とトリッキーなステップを武器に、ラグビーワールドカップ2015のサモア戦では、“忍者トライ”と称賛される鮮やかなトライを決め、そのシーンは今も多くの人の記憶に焼き付いている。昨シーズンにはトップリーグで最多トライゲッターも受賞した。フィールドでのアグレッシブなプレーと、共用テーブルの一角でパソコンに向かいながら、さまざまな人と楽しげに言葉を掛け合う、そのギャップに驚かされた。
僕は昔から、色々なところから刺激を受けたい人なんです。高校を選ぶときも、大学を選ぶときも、強豪校でラグビーをやりたいとか、そういう思いは一切なくて。進学先の小倉高校は、個性あふれる色々な学生が他の高校よりも集まっているというのが決め手でした。
大学1年のときには、オーストラリアに語学留学をして、向こうのクラブチームに1シーズン在籍もしました。学校にもクラブにもさまざまな人種の方がいて、自分自身の価値観は大きく変わりました。自分が正しいと思っていることが間違っていたり、もちろん逆もあったし。世界は広いんだなって実感した、非常に充実した体験でした。
以前にアメリカンフットボールに挑戦したことも刺激を受けたかったから。アメリカンフットボールのプレーではよくターンをするのですが、その流れからヒントを得たプレーができるようになりましたし、“人生のコンセプト”って言うと大げさですけど、常に色々な刺激を受けていたいんですね。
自分の評価と、周囲の評価。
だから色々な人が集まるコワーキングスペースは僕にぴったりの場所なんです。人からもらうエネルギーって非常に多くて、人に会うことが僕の活力になっていますね。幸いにも大学の同期や仲間も色々な業種で働いていますし、ラグビーをしている、していないに関わらず、色々な話を聞くのが楽しいし、好きです。僕は本当にラグビーしかやってきてないので、高校・大学、そのあとの海外での生活を含めて、僕が直接経験できなかったことを、みんなからたくさん教えてもらいました。そういった面では、多くのことを勉強できているいい人生だなと思ってます。
例えば、同級生が就職したときに、自分がいいと思って出した案が採用されなかったという不満を聞いたりしたんですよね。それってラグビーでも同じで、自分がいいプレーをしたと思っても、周りが認めなかったら仕方ないんです。監督が選手を選ぶときも同じで、じゃあ監督が使いたくなるような選手というのは何なのかを考えたときに、プレーだけでなく、プレーヤーとしての幅がないと勝ち残っていけないんだなって気づきました。みんながいてこその職場であり、フィールドなんですよね。
そうやって色々な人にたくさんの話を聞きますが、最後は自分できちんと考えるようにしています。もちろん人に影響されることもありますが、自分の人生なので、成功するにしても、失敗するにしても最後は自分のフィルターを通して、しっかりと決めたい。