濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
格闘技の“求心力”は今も失われず。
「ストーリーの共有」を見た3大会。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/07/22 10:30
DREAMフェザー級タイトル防衛に成功した高谷裕之(写真右)は試合後、花道でファンとの写真撮影やサインに笑顔で応じていた。対する、宮田和幸は試合後、「テイクダウンは行こうと思えば行けた」と敗れてなお、強気なコメントを口にした
必要なのは“テレビで有名”ではなく、魅力的な試合。
同じ日に開催された立ち技イベント、REBELSとIT'S SHOWTIME JAPANの合同興行もチケットが完売になった。IT'S SHOWTIMEは欧州最大のプロ格闘技イベント。ファンは、そんな大会が“日本初上陸”を果たすことや、K-1 MAX王者ジョルジオ・ペトロシアンvs.日菜太をはじめとする好カードに期待してチケットを買ったのだ。
DREAMも修斗もIT'S SHOWTIMEも、世間一般に名を知られた選手が出場していたわけではない。この3大会に出た数十人の中で“テレビで有名”なのは所英男くらいだろう。だが、それはファンには関係のないことだ。有名であろうがなかろうが、強い選手、魅力的な試合をする選手の闘いが見たいから会場に行き、一挙手一投足に目を凝らし、そして満足感とともに家路につく。それで充分なのではないか。
世間に向けた“遠心力”こそ失った日本格闘技界だが……。
かつてHERO'SやK-1に出場したことのある朴は、修斗の世界タイトルマッチに出場する意味を、こんなふうに語っている。
「メジャー(イベント)に出たとかテレビに出たとかっていうことより、この試合のほうがデカイいんですよ」
世間に向けた“遠心力”を失った日本格闘技界だが“求心力”が失われたわけではない。何より、この3大会で感じたファンの熱気は、これから再び世間に打って出るためには絶対に欠かせないものだ。