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日本格闘技界の歴史的1ページ!?
K-1 MAXが試みた、ネット無料配信。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2011/07/01 10:30

日本格闘技界の歴史的1ページ!?K-1 MAXが試みた、ネット無料配信。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

若手の成長ぶりが見えた今大会。久保優太(写真前列右から5人目)は「負ければ引退」という覚悟で臨み、見事優勝を果たした。谷川貞治イベントプロデューサー(写真前列右)は、今回のネット生中継を「新たな1歩」と、手応えを語っていた

 6月25日、日本格闘技界の歴史に大きく記されることになるかもしれない試みがなされた。

 代々木第二体育館で開催されたK-1 WORLD MAX63kg級日本トーナメントのインターネット生中継だ。オープニングファイトを含めた全試合が、USTREAM、YouTube、ニコニコ動画を通じて無料配信されたのである。

 K-1は中国の投資会社と組んでの新体制がいまだ確立しておらず、地上波での中継ができなかったというネガティブな要因も確かにある。

 だがインターネットによる動画配信はエンターテインメントにおいて欠かせない要素になりつつある。

 アーティストのライブやトークイベントなどがネット中継されるのは、いまや当たり前。格闘技界でも、UFCがネットPPVを成功させている。プロモーションとして、あるいは将来的なネットPPVでの収益につなげるための試金石として、今大会は非常に重要なものだった。

“流しているだけ”となってしまった、メッセージのないネット配信。

 ただし、その試みは完全に成功したとはいえないだろう。

 試合自体は、決してつまらないものではなかった。参加選手中、最も華のあるファイトスタイルの久保優太が勝負に徹した戦術で優勝を果たしたという意外性。その久保と準決勝で対戦し、好勝負を展開した18歳の現役高校生・野杁正明から感じた将来性など、見どころは多かったのである。

 だが、それはあくまでコアな見方だ。プロモーションとして考えれば、全試合が判定決着だったのはマイナスだろう。派手な打ち合いや壮絶なKO劇でユーザーの目を奪うことが必要だったのではないか。

 この大会では(おそらく経費削減のため)試合前の選手紹介VTR、いわゆる“煽りV”が流されなかった。会場で見ている分にはそれでも問題はなかったのだが、パソコンのモニターを眺める「タダなら見てみるか」、「ニコ動にアクセスしたらK-1やってた」という層に選手たちの個性がどれだけ浸透していたかは疑問だ。

 極端にいえば、今回のネット配信は“流しているだけ”になってしまったのだ。

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