濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
生中継、無料配信はあたり前!
格闘技大会成功の鍵はネットにあり。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGetty Images
posted2011/06/21 10:30
FacebookとYouTubeにより、ライブで無料配信された小見川道大(写真左)対ダレン・エルキンスの試合。小見川は敗れたものの、全世界の格闘技ファンへとその存在をアピールした
6月12日、日本の格闘技ファンの多くが、日曜日にもかかわらず朝7時には起床してパソコンを立ち上げていた。第1試合に小見川道大が登場する『UFC131』バンクーバー大会の生中継を見るためである。
小見川はダレン・エルキンスに判定負けを喫したものの、日曜の朝、起きぬけにカナダのビッグイベントをオンタイムで見られる幸せは誰もが感じたことだろう。
といっても、日本での放送権を持つWOWOWが生中継したわけではない。この大会の前座5試合は、FacebookとYouTubeで全世界に配信されたのである。もちろん無料配信だ。
「損して得取れ」。UFCのPPVビジネスを成功させた無料放送。
UFCのビジネスの基本はPPVである。最大150万件にも達する視聴契約が、UFCを世界最大の格闘技団体へと押し上げたのだ。だが(だからこそ、か)、一方で無料放送にも手を抜くことはない。
じつは、UFCがブレイクしたきっかけは無料放送だった。追加料金なしで見ることができるケーブルチャンネル・スパイクTVで選手育成番組『THE ULTIMATE FIGHTER』を放送したことで、UFCとMMAというジャンルの知名度は飛躍的に向上したのだ。
無名選手たちが共同生活を送りながら、UFCとの契約をかけて練習と試合を繰り返すこの番組によって、MMAファイターのイメージは“倒れた相手を殴りつける荒くれ者”から一変した。親しみやすい陽気な人間もいればストイックな者もいる。厳しい練習で多様なスキルを身につけなければ勝つことはできない。つまりMMAファイターはケンカ屋ではなく、個性豊かなアスリートであることが認知されたのだ。そして彼らが上がるひのき舞台を見るために、人々はPPVを購入した。
さらにUFCは、同チャンネルで大会の前座試合をオンエアする。こうして盛り上げたうえで、PPVへと誘導するのである。今年に入ると、先述したようにFacebookやYouTubeを使った配信も開始した。