MLB Column from USABACK NUMBER

絶不調・松坂大輔の窮地。
~“DICE-K不要論”を跳ね返せ!~ 

text by

李啓充

李啓充Kaechoong Lee

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posted2009/06/12 06:01

絶不調・松坂大輔の窮地。~“DICE-K不要論”を跳ね返せ!~<Number Web> photograph by Getty Images

松坂は4敗目を喫した6日のレンジャース戦後には「状態は悪くない」とコメントしているが、次回登板は正念場となる

 昨年18勝3敗・防御率2.90と活躍した松坂大輔が、今季は1勝4敗・防御率7.33と苦しんでいる。以下、今季の松坂の絶不調ぶりを数字で示したが、比較の対照として、ヤンキース首脳陣から「メジャー失格」の烙印を押された、2007年・井川慶の成績を付記した。今季の松坂が、2007年の井川をも「上回る」不成績であることがおわかりいただけるだろうか。

データ表

 ここで少し説明を加えると、OPSは出塁率と長打率の和である。一応の目安として、打者のOPSが8割を超えたら一流、9割でオールスター級、10割でMVP級、と考えていただければわかりやすいだろう。

 この目安をあてはめると、2007年の井川の被OPSは9割4分7厘であったから、相手打者は、みなオールスター級の打棒をふるったとみなしてよいだろう。一方、今季、松坂の被OPSは10割0分4厘、相手打者は、皆MVPに化けて松坂を打ち込んでいると考えてよいのである。

 また、WHIPは「投球回数当たりの与四球と被安打の和」であるが、防御率や勝敗が「運・不運」の影響を大きく受けることに対する反省から、投手の実力をより客観的に評価する数字として考案されたものである。たとえば、昨季の成績で見た場合、ア・リーグで規定投球回数に達した投手40人中、ベストはロイ・ハラデーの1.053、ワーストはネート・ロバートソンの1.660だった。

 松坂の成績をWHIPで見たとき、昨季の1.324はリーグ24位、勝敗(同4位)、防御率(同3位)が良かったのは「運が良かったから」ということが示唆されるのである。一方、今季のWHIP2.111は2007年の井川さえをも大きく上回り、「メジャー失格」と言われても文句が言えない結果となっている。

“井川以下”の松坂に浴びせられる容赦ない罵声。

 以上、今季の松坂の「絶不調ぶり」がいかに凄まじいかを数字で見てきたが、さらに問題なのは、絶不調の松坂に我慢しきれなくなったレッドソックス・ファンの間で、「ローテーションから外せ」、「マイナーに落とせ」、「トレードに出せ」という声が噴出し始めていることである。

 では、なぜファンが騒ぎ始めているのかというと、それは、レッドソックスは、他チームが羨むほど先発投手があまっているからに他ならない。6月中旬には通算210勝147敗・154セーブの大投手ジョン・スモルツがチームに合流する予定であるが、その場合、誰かがローテーションから外れなければならない。それだけでなく、トリプルAではクレイ・バックホルツが4勝0敗・防御率1.74・WHIP0.758と快投を続け、調子が悪い投手といつでも入れ替わる用意ができている。しかも、仇敵ヤンキースと熾烈な首位争いを続けている真っ最中とあって、「絶不調投手をローテーションから外せ」となるのも無理はないのである。

奪三振数が示す“松坂らしさ”の片鱗に期待したい。

 というわけで、これから、松坂に「試練の時」・「我慢の時」がやってこようとしているのだが、救いは、「9イニング当たり奪三振9.67」の数字が証明しているように、投球の威力・キレそのものは落ちていないことにある。ここまで打たれまくってきたのは、はっきり言って「甘いコース」の球が多すぎたことにあるのだから、何とか本来のコントロールを取り戻して、立ち直って欲しいものである。

#井川慶
#松坂大輔
#ボストン・レッドソックス

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