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「ルーキーにして本命!」天賦の才を発揮する加藤大治郎への期待。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph byVEGA INTERNATIONAL

posted2002/03/21 00:00

「ルーキーにして本命!」天賦の才を発揮する加藤大治郎への期待。<Number Web> photograph by VEGA INTERNATIONAL

 昨年、WGP250ccクラスでチャンピオンになった加藤大治郎が、新しいチャレンジとなるMotoGP(旧500cc)クラスで、素晴らしい走りを見せ、早くも「このクラスのルーキーにして本命」と言われるまでになった。昨年11月の初テストでその片鱗を見せて以来、世界各地のテストでその実力を遺憾なく発揮している。同じホンダワークスに所属する昨季500ccチャンピオン、バレンティーノ・ロッシが、2年間かけて築き上げて来たベストタイムを次々と破る快走に、才能はロッシ以上と言われ始めている。

 事実、これまで行なった7つのサーキットでのテストのうち、6つのコースでロッシを凌(しの)ぎ、記録を破れなかった残るひとつもほぼ同タイム。マシンが熟成しタイヤが進歩した分、タイムが上がって当然、という見方もあるが、ほかの選手の仕上がりを見ると、大治郎の快速ぶりは際立つばかりだ。どのサーキットでも500ccでは初乗りのうえ、今シーズンはミシュランを使うが、テストではダンロップも使うなど、高度な順応性も要求された。ホンダのエンジニアも、「タイムアップの要因は、マシンというよりは彼のポテンシャルのなせる業」と驚嘆する。テストを重ねるごとに、大治郎をルーキー扱いする者は皆無となり、今オフ、もっとも注目を集めることになった。

 250ccから500ccクラスへステップアップすると、まずは、500ccのパワーとスピードに慣れるのに時間が掛かるものだ。しかし大治郎は、パワーにもスピードにもすぐに順応し、初日からマシンのセットアップに時間を費やしている。類稀な動体視力の良さは折り紙つきだ。小柄な体で500ccのパワーをコントロールするのは大変ではないか、という質問にも、「疲れないように乗っている」と平然と答えてくれる。天才と呼ばれる者だけが持つ、スポーツ選手にとってもっとも大事な才能のひとつ、イメージした通りに体を動かすことが出来る選手のひとりなのだ。

 大治郎の乗る2ストローク500ccマシン、ホンダNSR500が、ホンダを筆頭とする各メーカーが送り出す4ストロークGPマシンに勝てるかどうかは、ここまでのテストを見るとやや疑問が残るところだ。だが大治郎は、1年目から勝負したい、と言い切る。マシンの力で圧倒的な差をつけられることさえなければ、初代MotoGPチャンピオンも夢ではない。

加藤大治郎

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