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デュオを成功させるために 

text by

小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

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photograph byNBAE/gettyimages/AFLO

posted2005/12/27 00:00

 二重奏を表す「デュオ(duo)」という言葉。もともと音楽の用語だが、スポーツ界においても、日本語でいう「コンビ」の意味で広く使われている。特に、NBAの世界ではよく耳にする単語だ。

 多くの場合、NBAのチームには攻撃の主役となる選手がふたりいる。チームオフェンスは彼らを中心に組み立てられ、その活躍が勝敗の行方を大きく左右する。1980年代のレイカーズ(マジック・ジョンソン&カリーム・アブドゥル・ジャバー)、90年代のブルズ(マイケル・ジョーダン&スコッティ・ピッペン)、00年代のレイカーズ(コービー・ブライアント&シャキール・オニール)など、強豪チームの多くが優れたデュオを擁していた。

 では、優秀なデュオを作るにはどうしたらいいのだろう。よく言われるのは、選手としての相性だ。ポジションやチーム内の役割が重ならず、互いに補い合える関係が理想的とされている。

 そう考えると、ゴールデンステイト・ウォーリアーズのデュオ──バロン・デービスとジェイソン・リチャードソン──は異色の存在である。

 デービスは26歳。NBAを代表する突進型ポイントガードで、スピードに乗ったドライブに定評がある。24歳のリチャードソンはシューティングガードだ。運動能力に優れ、スラムダンクコンテストでは2連覇を果した。

 共にゴールに切り込むアスリートタイプであり、ポジションも近い。だが、それでもふたりはデュオとして機能している。平均得点の合計は39.9点で、ガードコンビとしてはリーグ4位の好成績。個々の数字を見ても、リチャードソンが平均22.4点(リーグ13位)、デービスも9.7アシスト(同2位)と、お互いキャリアハイの成績を残している。何よりも、チームが好調だ。開幕25試合で14勝をあげ、一時は地区首位に踊り出た。

 このふたりが、なぜかみ合うのか?

 昨年まで、デービスは「わがまま」「コーチ不可能」と評されていた。苛立ちと故障を抱え、個人成績を落とし、チームも勝てないという泥沼の状況。「スポーツ・イラストレイティッド」誌によると、昨季途中にウォーリアーズへ移籍したとき、彼はコーチ陣にこう頼んだという。

 「俺がちゃんとやっていなかったら、文句を言ってくれ。怒り出すかもしれないけど、それでもちゃんと聞くから」

 自分を変えよう、チームを勝たせよう、という気持ちが、ガードとしての視野を広げ、パスの精度を上げた。当然、その思いはリチャードソンにも伝わる。もともと、「俺はダンクだけの選手じゃない」とジャンプシュートに磨きをかけていた。彼にとっても、それを証明する良いチャンスだった。

 ふたりのプレースタイルが大きく変わったわけではない。上を目指す向上心が、デュオの潤滑油になっているのだ。相性や役割分担よりも、こうした意欲こそ、すべてのデュオに必要なものなのかもしれない。

 デュオという単位で試合を見ることで、NBAの楽しみはまた広がる。リーグ随一のバックコートデュオは、ウォーリアーズを12年ぶりのプレイオフへと導くことができるのか?期待して見守ろうではないか。

スターたちの舞台裏

現在、リーグ最強のデュオは、76ersのアレン・アイバーソン(PG)とクリス・ウェバー(PF)だ。ふたりの平均得点は、何と、合計で53.1点。もちろん、デュオとしてはリーグ1位の成績である。好調に見えるふたりだが、その裏側はどうなのだろう。5月の1件──「あいつ(アイバーソン)とはプレーできない。あいつはドリブルし過ぎだ」というウェバーのコメントが新聞に掲載され、騒ぎになった──はまだ記憶に新しいし、最近も、ウェバーは起用法に不満をもらしているようだ。どこの世界でも、仲良く仕事するのは難しい。優勝という目標を持ち、ひとつにまとまることができればいいのだが……。

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